白鳥三昧

バレエマスターにDVDを貸してもらったので、日曜夜からずっと「白鳥の湖」ばかり見ています。借りた5本を全部見てから、気に入ったものをまた見たので、この4日間で20時間くらいスワン聴いてる。頭のなかがスワンでいっぱいです。

たった5本見てただけでも、カンパニーによって、振り付けによって、演出によって…果てしなくバージョンがあることがわかり、驚愕…。古典はわたしが思ったよりもずっと自由なのね。

以下、見た順番にメモ

パリ・オペラ座

パリ・オペラ座バレエ団 白鳥の湖(全4幕) [DVD]

パリ・オペラ座バレエ団 白鳥の湖(全4幕) [DVD]

振付:ルドルフ・ヌレエフ、オデット/オディール:アニエス・ルテステュ、ジークフリード王子:ジョゼ・マルティネズ、ロットバルト/家庭教師:カール・パケット、王妃:ミュリエル・アレ、2005年12月収録。

プロローグでフライングしてた。セットをシンプルにすることで舞台を広く使い、多くのダンサーでフォーメーション変えていくのが素敵だった。大役のダンサーだけでなく、すべてのダンサーが輝く感じ。衣装は淡い色彩が多かった。

一番驚いたのはロットバルトと家庭教師が同じ人であること!このカール・パケットがヴァンパイア系で超絶好みの顔。Ziggy Stardustの頃のデヴィッド・ボウイに似ている。オデットのアニエス・ルテステュも、気品があって、オディールのときの表情も素晴らしかったー。ロットバルトや白鳥は王子の苦悩の化身なのかな?マシュー版にもちょっと通じる印象。これは初見でDVD購入を決めました。


ミラノ・スカラ座

振付: ウラジーミル・ブルメイステル、2幕イワノフ版・3幕バランシン版、
オデット/オディール:スヴェトラーナ・ザハーロワ、ジークフリード王子:ロベルト・ボッレ、ロットバルト:ジャンニ・ギズレーニ、道化師:アントニーノ・ステラ、王女:サブリナ・ブラッツォ、王妃:フラヴィア・ヴァローネ、2004年収録。

道化師いるバージョンはわたしが去年初めて見たのもそうだったな。イタリアだからか、舞台も衣装も色彩豊か。セットも豪華、プロローグでオデットが白鳥に姿を変えられてしまうシーンも凝ってる。

ザハーロワさんは硬質な美しさを放ってますね。この世にこんな美しいからだの人がいるとは…ね。王子はプレーボーイ風。絵になります。3幕の音楽が聴きなれたものじゃないので驚いた。こういうバージョンもあるのかあ。そしてハッピーエンドも初めて見た。


アメリカン・バレエ・シアター

振付:ケヴィン・マッケンジー、オデット/オディール:ジリアン・マーフィー、ジークフリート王子:アンヘル・コレーラ、ロットバルト:アイザック・ステイパス/マルセロ・ゴメス、女王:ジョージナ・パーキンソン、家庭教師:フレデリック・フランクリン、ベンノ:エルマン・コルネホ、2005年2月収録。

舞台も衣装も演出もすべてが派手。ロットバルトが怪物フクロウ時と人間時で2人いる。人間のときのゴメスさん超セクシー。舞踏会ですべての女性をかどわかして、女王までたぶらかしてた。怪物時はニコちゃん大王な姿でね…これは…気持ち悪すぎるだろ…。

ソリストの見せ場がとても多くて、32回連続フェッテもトリプルとか入れちゃって、個人の技能を思う存分発揮してます。でも…最後の飛び込みでわたしったら大笑いしちゃって…バッドエンドなんだけど…笑いのツボを刺激された…。


★ベルリン国立

Swan Lake [DVD]

Swan Lake [DVD]

振付:パトリス・バール、オデット/オディール:シュテフィ・シェル、
ジークフリート王子:オリヴァー・マッツ、ロットバルト:トルシュテン・ヘンドラー、女王:ベッティーナ・ティエル、ベンノ:ジェンズ・ウェバー、1998年収録。

ストーリーが面白い!女王と王子の関係が重視されてるのがマシュウ版にも通じる。こっちは母親に溺愛され束縛されてる王子だけど。女王は息子と永遠の愛を誓ったオデットが許せない、邪魔者だから首相であるロットバルトを使って計略を図るのだけど…。ドラマチックです。

女王が踊りまくるので、その分オデット/オディールの存在感が薄くなっちゃった印象。素晴らしいダンサーらしいのに。

衣装はほかとは違い、淡い色の、丈の長いドレスが多くて、回転するたびドレープがきれいに広がり美しい。男性たちも「白タイツ」なのは王子とベンノだけだったかな?あとは燕尾や軍服でかっこよい。3幕の各国の姫君たちはチュチュで、登場シーンだけケープをつけてるのだけど、それが可愛い。


★オーストラリアバレエ団
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振付: グレアム・マーフィー、オデット:マドレーヌ・イーストー、ジークフリート王子:ロバート・カラン、ロットバルト男爵夫人:ダニエル・ロウ、2008年収録。

ロットバルト男爵夫人!!なんだそれ?と思いますでしょう。ええ。なんと三角関係です。オディールはダイアナ妃がモデル、ということは必然的に王子はチャールズ皇太子で、ロットバルト夫人はカミラさんということで、うおぉ!いいのかそれ!とドキドキしちゃったわ…。

しょっぱなから王子とロットバルト夫人の浮気現場、まさに濡れ場から始まるんだもの…。その後のオデットがかわいそうすぎて…涙なしでは見られない。サナトリウムに連れて行かれるシーンは「欲望という名の電車」のブランチを思い出した。

そしてストーリーも面白いけれど、振り付けがすごくて、このグレアムさんという方は音が視覚的に感じる人なんじゃないのかしら?と思うほど、ひとつひとつの音に固執して動きに変換してる印象。音楽が語っていることを文字として読んで(言語として感じて)、体で表現してる。



5本見終わっての感想は、演出によってこんなに曲の順番とか変えていいのね〜と。「どの」白鳥の湖を見るのかはとても大きな問題でもあり、でも「どの」白鳥の湖でもドラマチックで面白いんじゃないかなあと思った。これだけ振付・演出のバリエーションが生まれるというのは、ひとえにチャイコフスキーの楽曲の物語性のため。これからも表現者の想像/創造を刺激しつづけて、いろんな白鳥が見られるんだなあと思う。すごいことだ!