帯状疱疹

ヒトは月に映画を30本見ると帯状疱疹になります。

嘘です。しかし帯状疱疹になったのは本当です。首筋が痛むので、また寝違えたか…マッサージに行くか…でも腫れも出てきたしヘタにいじらないほうがいいのかしら…と思っているうちに痒みも出てきて、なんだろうこれは?と職場の保健室へ行きましたら帯状疱疹であると皮膚科を紹介され、病院では「ちょっと来るの遅かったよ、もっと早く来てね」と注意されました。治療が遅れると神経の痛みが残るそうです。

そして病気の原因はストレスもしくは疲労と言われたのですが、わたしの日常生活にストレスはないので、満場一致(夫と二人)で「映画の見すぎで疲れたんだね!」ということになりました。皆さんも映画の見すぎに気を付けてください。

帯状疱疹が出たのは10月頭のことなのですが、その前の9月は映画30本とお芝居やバレエやライブを数本こなしたところで、たしかにすごく疲れていたのです…。遊びすぎて疲れるってどういうことなの…ほとんど家にいなかったし、夫の顔をあまり見られませんでした。

なぜ月に30本も見ちゃったかというと、TOHOシネマズのシネマイレージが6000ポイント貯まり、1か月無料パスポートに交換したため、ひゃっは〜映画見放題〜!と浮かれて休日には一日3本見ていたのと、TOHO以外の映画館でも見ていたからです。

無料パスポートではネットでの座席予約ができないので、当日、映画館の窓口へゆき発券してもらうのですが、1本予約するとすかさず「で、次は何にしましょう?」とまるで寿司屋のように煽られたのが面白かったです。おそらくシネマイレージをポップコーンやドリンクではなく1か月無料パスポートと交換する人たちは、「一日に何本も見る人たち」「1本で終わるわけがない」という認識なのかもしれません。はい、煽られるままに見てきました。


そして10月は東京国際映画祭があり、そしてこの夏どっぶりとハマった『MISSION : IMPOSSIBLE ROGUE NATION』のIMAXの再上映が始まったので、ここでも複数回見ることになりました。結果10月も映画館で映画を29回見ました。ぜんぜん懲りてない!夫から「自分の体力のなさをちゃんと考えて遊ぶんだよ…?」と諭される始末です。

東京国際映画祭には今年初めて行ったのですが、とてもとても楽しかった!毎日毎日、六本木に通い(しかし映画館に直行するため六本木ヒルズの店をすべてスルー、映画館以外に何があるのか知らないままだ)、一日に4本、自己ベスト更新しました(なんの記録か)。

映画祭ではコンペティション部門を9本(ルクリ、スリー・オブ・アス、ニーゼ、フルコンタクト、神様の思し召し、ガールズハウス、モンスター・ウィズ・サウザンヘッズ、カランダールの雪、家族の映画)、ワールドフォーカス部門を6本(錯乱、ボディ、灼熱の太陽、土と影、シム氏の大変な私生活、河)、クロスカットアジア部門を1本(インビジブル)を見ました。映画祭が始まる時点で配給が決まってない作品のうち、スケジュールと合い、かつ興味のあるものから選びました。本当はもっと見たいものがありましたが(ヴィクトリア、タンジェリン、シュナイダーvsバックス、ミューズアカデミーなど)、どこかの配給会社が買ってくれて一般公開されるといいな…。

コンペティション部門の作品では上映後に監督やプロデューサー、主演俳優のQ&Aが設けられている場合が多く、わたしも時間のある限りお話を聞いて作品理解の手助けにしました。

鑑賞した16作品のうち、とても好きだと思ったものはトルコが舞台の『カランダールの雪』(最優秀監督賞)、イランからフランスへ政治亡命した両親をモデルにした『スリー・オブ・アス』(審査員特別賞)、フランスのコメディ『シム氏の大変な私生活』、クロアチア民族紛争を3組の男女の物語を通して描いた『灼熱の太陽』、コロンビアが舞台の『土と影』です。『カランダールの雪』と『土と影』はとにかく映像と静けさが好きです。

あと実験的な映画のため意味が分からなくて2回見たエストニアの『ルクリ』も映像が好きです。監督もインテリジェンスを感じさせつつ素朴な感じで、すっかりファンになり、サインをもらいました(笑)『ルクリ』を初日に見たときに、これは日本で一般公開しないかも…と踏んで(失礼)、もう一度大きなスクリーンで見たのです。予想が外れて配給されれば、それはそれで嬉しいのでもう一度見に行きますよ…。

以上、ブログを更新しなかった2カ月なにをやっていたのか、それは体調を崩すほど映画を見ていたという話でした。

小谷美紗子 & 寺尾紗穂 @ 晴れ豆

小谷美紗子 セットリスト

  1. 手紙
  2. 新曲(前回初披露した別れの歌、楽曲提供予定だったそうだが気に入って自分で歌うと)
  3. Gnu
  4. あの夏の日々
  5. カヴァー曲 Crazy Love
  6. 自分
  7. Rum & Ginger
  8. 手の中
  9. アンコールは寺尾さん伴奏で 照れるような光

この日が初対面の寺尾さんをとても気に入ったようで、MCでおなじみの長い長い沈黙のあと「歌ってないとき寺尾さんのことを思い出してしまう…」とまで言っていた(笑)それは恋のはじまる予感…w

小谷美紗子 @ 恵比寿 天窓 switch 9/4(金)

岩崎愛さん主催のイベントに行ってきました。岩崎さんは大ファンだという小谷さんにアルバムレコーディング参加してもらい、ライブも一緒にできるようになるとは!ととても嬉しそうでした。

小谷さんは「愛ちゃんと会うのは今日が2回目だけど(初対面がレコーディング)、もう20回くらい会ってるみたいな親しみを感じる。あとでセッションするかもしれないけど、それは二人が上手くいってるイベントだから」と、また問題発言してました(笑)よっぽど気の合わない人が過去いたのだな…w

  1. 街灯の下
  2. universe
  3. 青さ
  4. あの夏の日々
  5. who
  6. 新曲(星が眩しいそんな夜は〜)
  7. 眠りのうた

アンコールは岩崎愛さんと

  • 嘘(小谷さん参加の岩崎さん次アルバムに収録)
  • 手紙

まさかデビューアルバムの「あの夏の日々」が聴けるとはね!作ったのは14歳のときで、「今思うと、ストレートな、14歳らしい言葉選びだなと」って、いやいや、十分大人だよ。やはり歌詞に無常観があるもの。

「手紙」は岩崎ギターで小谷歌1verse 、次に小谷ピアノで岩崎歌、という振り分け。岩崎さんは「ファン過ぎるのを出すと嫌われるかもしれないから、自宅で嫌われないように練習してた」「わたし大丈夫?俺たちの小谷美紗子を…!みたいになってない?」とMCで心配してました(笑)またも愛され美紗子…カリスマ性が止まらないな!

JOJコンサート8/27(木)@東京芸術劇場コンサートホール

ジョン・オーエン=ジョーンズの来日コンサートへ初めて行きました。JOJさんを知ったのは「オペラ座の怪人25周年記念コンサート」のカーテンコールで歴代ファントムとして、めっちゃ美声のsooooooar!で認識し(パート分けした人もJOJにここを歌ってほしかったんだろうし、ご本人もこれ見よがしではない程度のドヤ〜って期待通りの声だし、カメラも下からのアングルでJOJの手が上がりきるところまでしっかり押さえてて、もぉ万全!)、その後の後追いで「レ・ミゼラブル25周年」のカーテンウオールでコルムさんを心配そうに見守っているのも確認し、ロンドンキャストレコーディングCDも聞きましたが、ご本人のソロアルバムまでは手が伸びず、前回のミュージカルコンサートイベントでの来日も見逃してました。

それが、いよいよ!満を持して!初JOJ!JOJ!開演前から高まる期待!セットリストなどはあとで追記するとして、コンサート後のテンションマックスのわたしの感想ツイートが完全におかしかったので、転記しておきます。

  • いやーー!!初joj超たのしかったーーーー!今日が日曜日で、明日からまた一週間始まってもがんばれそうなくらいパワーチャージしたーーー!!なんだあれーーー!!
  • 特にファンじゃないし、予習もしてない、何の気なしになしに見に行って、うおおおおおー!!ってかっさらわれたよ!歌声も凄いけど、客乗せの人心掌握力も半端ない!生まれる時代が古ければ、歌声だけで村中から大切にされて一生食べていける!わたしが大工なら家くらい造るし、パン屋ならパンを焼k
  • そのうち噂を聞きつけた王から召されてね、戦のたびに戦意高揚の歌とか勝鬨をあげるとかで、その声を使うわけです。そうすると隣国にも名がいきわたっちゃって、「俺のために歌え!」みたいなことになるわけですよ!ちょっとした戦争ですよ。取り合いですよ!
  • 「こんな戦を望んだわけじゃない…どうして俺はこの声で生まれてしまったんだ…!」というひとくさり葛藤があったのちに、結局はその歌声でもって世に平和がもたらされる、みたいな「大河ロマンミュージカルJOJ物語」の上演が待たれます。
  • 全編新宿コマ、昭和歌謡ショーっぽくてさーなんか元気になる要素しかない!結晶みたいなもので構成されてるわけですよJOJコンサート。客席下りてきたら、間違いなく万札のレイとか「おひねり」あげたい感じ。「これで!次郎いってね!たらふくお寿司お食べね!!」みたいな。
  • でも最後の最後、スタンディングオベーションでJOJを迎え、じゃあ最後に1曲シンガロングしてねと言われたのに、客「いや…歌えるほどは知りませんけど…」みたい棒立ちになっちゃってね、全校集会で「では校長先生より今週の1曲です」…「校長、朝からこの声量かよー…」みたいな感じ。
  • というわけで、なんかもう月曜日からがんばれそう!みたいな気持ちで劇場をあとにしました!
  • WYWSHAを歌ったことによりall male Phantom the Opera の妄想が止まらず、クリスティーヌがjojなら、ラウルはアールさんかな?ファントムはjojより天使の歌声…えぇーそんな人いる?あ!レアサロンガ?ということでファントム以外オール男性PotOやろう!
  • ちなみにわたしがおひねりを入れたかったのは2部のしょっぱな、Feelin’ Good とMotherless Childです。POI脳だから、Feelin' Goodはニーナ・シモンしか思い浮かばないのだけど、まあーこんなにきれいに歌っちゃうのねえと思った。
  • MotNはコルムさんの声がいまでも耳に貼りついてて、あ…やっぱり違う…という出だしだったんだけど、1Verseはクリスティーヌの心に忍び寄る甘いささやきで、まさに天使の声。soar---!で「落ちたな」とわかってからは支配するための強い声で、be----!で昇天させる技がよかった。
  • クリスティーヌが…見えるわ!(マヤ的に)。ミュージカル曲をコンサートで羅列していくのって、バレエのガラ公演といっしょで、そんな簡単には感情移入できませんけど…置いてけぼり…みたいになることもあろうにさ、さすがでしたよね!


……ミュージカルあんまり興味ないし、曲の背景とか知らないのに、なぜここまで言葉があふれかえっているのか…。とくかく「人を楽しませる」技をたくさん見られて幸せなコンサートでした。JOJさんキャリアのなかでも2000人の会場というのはかつてない規模だそうなので、それを極東で埋められたこと、しかもたいへん盛り上がったのは良かったな〜。

RED @新国立劇場小劇場 8/26(水)夜

映画007シリーズ『スカイフォール』や『スペクター』(12月公開)の脚本、ドラマ『Penny Dreadful』の制作・脚本を手がけたジョン・ローガン作『RED』の翻訳劇を見てきました。

『RED』は抽象表現主義の代表的な画家であるマーク・ロスコをモデルに、そこへ架空の人物であるアシスタントの青年ケンを配した二人芝居です。初演は2009年ロンドンのドンマーウエアハウスで、ロスコ役はアルフレッド・モリーナ、ケン役はエディ・レッドメイン。劇中で制作しているシーグラム壁画の一部は千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館で展示されています。

作:ジョン・ローガン、翻訳・演出:小川絵梨子
キャスト:田中哲司(ロスコ)、小栗旬(ケン)
美術:松井るみ、照明:服部基、音響:加藤温、衣装:安野ともこ、舞台監督:瀬粼将孝、プロデューサー:北村明子、企画・製作:シス・カンパニー

ローリー・キニアさんが出演してるからと見始めたドラマ『Penny Dreadful』(邦題は「ナイトメア 血塗られた秘密」)は、ゴシックホラーで血まみれシーンなども多いのですけれど、セリフにはワーズワースシェリー、ジョン・クレアなどロマン派の詩人の作品が多く引用され、それがまたキニアさんはじめとする声の良い役者さんたちに読まれるものですから、まあ…なんて素敵な響き…と興味を覚え、理解もできないのに詩集を買って読んでみたりした去年の冬でした。
その教養の塊のような脚本を手がけたジョン・ローガンの二人芝居となれば、見に行かないわけにはいかん…とチケットを取りました。テレビでも人気の俳優さんが小さい劇場で演じるのですから、覚悟して、いつもよりちょっと頑張って(といっても先行予約に申し込んだだけ)チケット取りました(笑)

    • 舞台

窓に目張りがされた薄暗いアトリエが舞台。中央には制作途中の大きなカンヴァスが掛けられ、絵の具や刷毛などの道具類がテーブルを埋め尽くし、上手に蓄音機、下手に一人掛けの椅子。カンヴァスの赤(RED)に深みを持たせる照明がとても美しいです。劇中、蛍光灯にさらされるシーンがあるのだけれど、照明の違いでこんなにも平板に、のっぺりとした色に見えるのか!とハっとしました。音楽はクラシックやジャズ、演者が蓄音機を操作しますが、実際は上のスピーカーから音が聞こえます。

    • 内容について

画家と、画家を目指す青年は師匠と弟子よろしく、ロスコが投げかける芸術論に必死に食らいつき、ケンは教養を身につけていく。しかし舞台が暗転するたびに二人の関係性は変化していき、子犬のように無邪気だったケンは挑発的な言葉をロスコに投げかけるようになる。ロスコが語る芸術論や絵との向き合い方を聞いているだけでも、その情熱に打たれて涙が出てしまうのに、追う者と追われる者の立場がいつしか逆転し、追われる者はただ存在消失のときを待つだけになる切なさ!とても好きです。

    • 演出について

開幕まもないということもあってか、田中さんはセリフを噛むことが目立ちました。初めから怒涛の勢いでものすごい量のセリフを語らせるので、公演を重ねればなじんでくるのかな。
中華のテイクアウトを食べるシーン、ロスコは麺、ケンはご飯ものを食べているのかな?ガツガツと食べながら、同時にセリフを言うので、言葉が聞こえなかったり、ゲホっとむせたり、口のなかのものが出てきたりする。パンフレットを見たら、生命力が垣間見える演出とのことだけれど、正直、わたしは好みではなかった。まずセリフが聞き取れないことが悲しいのと(この戯曲のいちばんの魅力は言葉の激しいやりとりなのに、それが聞こえないなんて)、むせると客席からクスクス笑い声が起きる。こういう何ひとつ面白くもない生理現象を笑う感覚がどうにも理解できないので、観客が笑うことを意図してるならば、それはどんな効果があるということなのだろうか。


とはいえ、大いに楽しみました。ちょうど1か月後にもう一度見に行く予定なので、二人がどう変化しているのか、楽しみです。



追記:
9/30(水)昼
二度目のREDはとてもとても良かったです…。1ヶ月後になると台詞は血肉になっているようで、前回気になったセリフの聞き取りにくさ、噛むところなどがなかったです。そのおかげで、ロスコの言葉が心に直接触れてくるというか、決して感情移入してるわけではない(そういう親近感は持てない人物像)のに、言葉が刺さってきて、冒頭からずっと泣きっぱなしでした…ひとりで見に行ってよかった…あぶない人だった…。
前回つらかったご飯モグモグシーンも、客席からの笑いはあったけど、色の流動性、画の生命感など、話している内容と呼応するダイナミックさ、は汲み取れて不快な感情を持ちませんでした。
残念ながら日本語訳の戯曲はないので、英語のままのを買いました。それを読んで脳内上演できます。

Globe to Globe Hamlet @さいたま芸術劇場小ホール 8/19(水)

イギリスロンドンのグローブ座がシェイクスピア生誕450年を記念して2014年4月から2年間かけて205ヵ国をめぐるワールドツアーをしています。そのツアーカンパニーがとうとう来日し、8/19、20にさいたま芸術劇場で公演しました。わたしは一日目の19日の公演を見てきました。


キャスト
ハムレット:ナイーム・ハヤット(Naeem Hayat)
クローディアス/先王/旅役者の座長:ジョン・ドゥーガル(John Dougall)
ガートルード/旅役者/墓堀人2:アマンダ・ウィルキン(Amanda Wilkin)
ポローニアス/墓堀人:ラウィリ・パラテネ(Rawiri Paratene)
レアティーズ/ギルデンスターン/オズリック:ベルース・カーン(Beruce khan)
オフィーリア:ジェニファー・レオン(Jennifer Leong)
ホレイシオ:トム・ローレンス(Tom Lawrence)
ローゼンクランツ:マシュー・ロメイン(Matthew Romain)


キャストクルーは12人で、この日は8人の役者とミュージシャンが1人と舞台のセット(というかケース)を配置換えする人が1人で…10人がステージにいました。ハムレット役以外は日替わりでいろんな役を演じます。上記は覚えてるだけの役名を書いたけれど、本当はもっと掛け持ちしています。それだけでも驚きますけれど、劇中の効果音や音楽もすべてキャストがその場で演奏します。開演前にキャストが登場し、フィドルやバウロン(アイルランドの太鼓)を奏でながら歌います。

これはロンドンのグローブ座での映像だけれど、ワールドツアーでも同じ曲が演奏されました。2011年の公演、ハムレット役はジョシュア・マクガイル(映画「アバウトタイム」のローリー役)。


セットは2本の細い柱、ロープを渡し赤いカーテンがかけてあり、劇中劇のときは幕として、またはクローゼットシーンなどの部屋のカーテンとして使われます。壁には衣装や楽器が掛けられ、椅子やテーブルや墓などは機材運搬用のケースが上手く使われていました。暗転がないので、場面の転換は明るいまま行われます。ちょっとしたムーブメントを加えながらキャストがセットを移動させる手法は、去年来日公演を見た「Once」でも取り入れられていましたが、古くからある方法なのかなあと思いました。シェイクスピアの時代には暗転などなかったでしょうし。

衣装についても、何役も演じるために上着だけで端的にその役を表していたり、役から役への繋がりがスムーズであるように配慮されており、人員、物資ともに必要最低限、ミニマムな舞台でした。それなのにチープな感じや稚拙な感じは全くなく、全編に渡たり目から鱗がボロボロ落ちる舞台体験でした。面白かった!


演出で一番好きなのは、最後の最後。主要な登場人物が死んでいく陰惨な幕切れからカーテンコールへの繋がりです。たいていの公演では幕が下りて、再び上がったときには「生き返っている」(笑)わけですが、グローブ座は幕が下りないので、終演後に音楽が流れ、オフィーリア役の俳優が死んだキャストひとりひとりを踊りながら触って「生き返らせ」ます。それはまるで死者の魂を天上へ送るようでもあり、感動的でした。生き返ったキャストたちは踊りを続け、終演の挨拶になります。これは、それまで鬱々としたハムレットの虚構の世界にどっぷりと浸っていた観客にとっても現実へ戻る手立てにもなり、気持ちがいくぶん軽くなりました。


本当に楽しかったです。こんなに素晴らしい舞台を見られてよかった。しかし今回はビザの関係なのか、チケット代を取ることができないという事情があった公演でした。そのため終演後には寄付を募るためにキャストがロビーに出てきてくれたり…ささやかな金額ですが、少しでも助けになれば…と寄付してきました。


TwitterTumblrのワールドツアーアカウントをチェックしていると、え?そんな国まで?というような場所(例:ソマリランドハルゲイサ)や、劇場もさまざまでホールのような大きなところから野外劇場で土砂降りに見舞われたり、衣装などが届かずにそのまま演じたとか、もう…ツアーのほうもシェイクスピア劇に負けず劣らずドラマチックな毎日という印象です。

あと1年、皆さんが元気で、無事にツアー完遂できることを祈っています。



ワールドツアー1年目のトピック動画


ホレイシオ役が素晴らしかったトム・ローレンスさんのインタビュー

ポローニアス役だったラウィリ・パラテネさん(左)とクローディアス役だったジョン・ドゥーガルさん(超かっこいい)。ほんと、2年もツアーで家に帰れないなんて…想像するだけで大変だ。

第14回世界バレエフェスティバル  <ガラ> 8/16(日)

また記憶が薄れゆくころに慌てて記すバレエフェスのガラ公演の感想です。



■第1部

「ドリーブ組曲
振付:ジョゼ・マルティネス/音楽:レオ・ドリーブ
リュドミラ・コノヴァロワ マチアス・エイマン
磐石カップル。エイマンにコノヴァロワは少し大きいパートナーだと思うけれど、安心して見ていられる。ドリーブ組曲の衣装はアニエス・ルテステュのデザインだけれど、コノヴァロワにはもっと豪華な衣装のほうが似合うな〜。

「三人姉妹」
振付:ケネス・マクミラン/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
サラ・ラム ワディム・ムンタギロフ

チェーホフ「三人姉妹」を元にしたマクミラン作品から、次女マーシャとヴェルシーニン中佐のW不倫のPDD。英国ロイヤルバレエのDVDだとバッセルとムハメドフが踊っています。その二人に比べてサラとムンタギロフだと大人の色気というところまでは出てないけれど、十分に切なくて、美しい踊りでした。ペールピンクのドレス、軍服と衣装も素敵です。

 
「雨」
振付:アナベル・ロペス・オチョア/音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ
ヤーナ・サレンコ ダニール・シムキン
ふたりの身体能力が如何なく発揮されてました。サレンコはバリバリの古典でも、こういうコンテンポラリーでも踊りこなせるのがすごい。


「椿姫」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:フレデリック・ショパン
マリア・アイシュヴァルト アレクサンドル・リアブコ
念願のリアブコのアルマンを見ることができました!!もぉもぉ、完璧だった!わたしが思い浮かべる、心底優しくて、シャイだけれど秘めた情熱があるアルマン…はあ…(ため息)見てる途中で「これ…この記憶は冥土の土産になるやつだ…」と思いました(笑)アイシュヴァルトのマルグリットも知的で媚びない強さと、不安気な少女の瞳を併せ持っていて、とてもよかった。ああ、全幕で見たい〜〜。



■第2部

「ヌアージュ
振付:イリ・キリアン /音楽:クロード・ドビュッシー
ディアナ・ヴィシニョワ マルセロ・ゴメス
ゴメスはソロでも繊細な踊りをするけれど、サポートも本当に丁寧で、相手を輝かせるダンサーなんだなあ…ヴィシニョーワとの信頼関係がこちらにも伝わってきました。


カルメン組曲
振付:アルベルト・アロンソ/音楽:ジョルジュ・ビゼー/ロディオン・シチェドリン
ヴィエングセイ・ヴァルデス ダニーラ・コルスンツェフ
華やかな雰囲気を持つヴァルデスにカルメンはぴったりでした。A・Bプロともに黒子役に徹していたコルスンツェフが、ここでは輝いていた。あら、こんなにかっこいい踊りをするのねえ〜!と開眼しました。

「ル・パルク」
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ /音楽:ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト
イザベル・ゲラン マニュエル・ルグリ
今回のバレエフェスはイザベル・ゲラン、それに尽きると確信しました。Bプロの陽気でチャーミングな「こうもり」から一転、「ル・パルク」では大人の愛の顛末を短い時間で表現しきってました。ゲラン本人は清廉なイメージが強いのに、踊るとさまざまに変容して、すごい表現力でした。つま先の美しさも群を抜いていた!



「さすらう若者の歌」
振付:モーリス・ベジャール/音楽:グスタフ・マーラー
オスカー・シャコン フリーデマン・フォーゲル
シンクロしてるようで対照的な振り付けと、二人が持つ雰囲気がそのまま「光と影」という印象でなかなかよかったです。フォーゲルが無垢で無知な若者、シャコンが現実の厳しさを悟らせる使者とも見て取れました。カーテンコールでは二人が肩を組んだり、ハグする様子が可愛かったです。



■第3部

ウロボロス
振付:大石裕香 /音楽:ヤン・ティルセン、ヨハン・パウル・フォン・ヴェストホフ、アレックス・バラナウスキー
シルヴィア・アッツォーニ アレクサンドル・リアブコ
夜会服を着て、仮面をつけた人形に命が吹き込まれてゆく物語。作品の世界観と、それを存分に描き出す二人の表現力が素晴らしくて、思わず涙がでました。いつまでも見ていたいダンサーだな、と改めて思いました。来年の来日公演が非常に楽しみです!

白鳥の湖」より "黒鳥のパ・ド・ドゥ"
振付:マリウス・プティパ /音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
マリーヤ・アレクサンドロワ ウラディスラフ・ラントラートフ
面白かった!この二人のパートナーシップは奇跡のようで、見てるだけで幸せになります。アレクサンドロワのオディールは気品があり、傲慢で、まさに高嶺の花。その花に臆面もなく恋焦がれ、身を捧げるラントラートフのジークフリード。オディールに騙されたままでも、十分ハッピーになりそうな王子でした(笑)

ハムレット
振付:ジョン・ノイマイヤー /音楽:マイケル・ティペット
アンナ・ラウデール エドウィン・レヴァツォフ
ラウデールのノイマイヤーダンサーぶりがわかる作品でした。レヴァツォフの演技力はもう少しほしいところですが、まだ若いのかな。

 
シェエラザード
振付:ミハイル・フォーキン/音楽:ニコライ・リムスキー=コルサコフ
上野水香 イーゴリ・ゼレンスキー
ゼレンスキー、こんなに踊れるのに、なんでBプロあれにしたの!!とツッコミたかったです(笑)セクシーな奴隷役でした…ごちそうさまでした…

「ヴォヤージュ」
振付:レナート・ツァネラ /音楽:ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト
ウラジーミル・マラーホフ


■第4部

「ジゼル」
振付:ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー /音楽:アドルフ・アダン
アリーナ・コジョカル ヨハン・コボー
コジョカルのジゼルはいいねえ…献身的な愛が伝わってくるし、空気のように軽く儚い雰囲気がよくでてる。

「タンゴ」
振付:ニコライ・アンドロソフ /音楽:アストル・ピアソラ
ウリヤーナ・ロパートキナ
バレリーナのなかのバレリーナ」という印象でABプログラムともにチュチュ姿でしたが、これは黒サテンのシャツにスーツ、中折れ帽という男装姿でシャンソンを踊りまくるソロ作品でした。もおね、ハイレベルな宝塚というか、黒燕尾着て大階段から羽根背負っておりてきてほしかったです。すっごくかっこうよかった。こういう作品も踊るのか…と、見る目が変わりました。
 

「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:フレデリック・ショパン
オレリー・デュポン/エルヴェ・モロー
眼福眼福。でも、なんだろう…来日全幕公演のときもそうだったのだけど、この二人の「椿姫」って感情が伝わってこないんだよな…。いちばん切ない黒PDDであっても。

ドン・キホーテ
振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス
ヤーナ・サレンコ スティーヴン・マックレー
ロイヤルの3幕の衣装は白地に金糸の結婚衣装なので、赤毛・色素薄い系の二人には本当によく似合ってゴージャス!テクニックも素晴らしくて、フェスティバルの大トリを飾るのにふさわしい組み合わせでしたね。キャスト変更を受けて今回サレンコは各日2作品は踊る大活躍ぶりで、しかし疲れも不調も見せず毎回クオリティも高くて、感心しました。マックレーはいつ見ても完璧。鉄壁。



■第5部(ファニーガラ)
カルメン エスカミーリョパートをヴァルデスがチョビ髭つけて踊りました。

・瀕死の白鳥 コルスンツェフが白鳥に。大柄なレヴァツォフもチュチュ(笑)それだけでも可笑しいのに、指揮者のオブジャニコフさんまで天使の輪と羽根をつけて登場して、その荷台をコルスンツェフがゼエハアしながら引っ張ってくるという。最後はコルスンツェフ白鳥が天使指揮者に射られて絶命するというオチ…。シュール。

・お嬢さんとならず者 ラントラートフが「お嬢さん」アレクサンドロワが「ならず者」で、ラントラートフの箱入り娘、「ええとこのお嬢さん」ぶりが素晴らしくて、ちゃきちゃきしてるAプロアシュレイよりも可憐だった(笑)。アレクサンドロワはならず者というよりは「いたずら小僧」って感じの可愛らしさ。

・こうもり マラーホフがベラ、アイシュヴァルトとコノヴァロワがウルリック。マラーホフさんの安定のポワントワーク…そして美脚…生き生きしてたわ!

・4羽の白鳥×2 舞台左からピカチュウつなぎにチュチュを付けたシムキン、レヴァツォフ、シャコン、エイマン、マックレー、フォーゲル、リアブコ、モローの8人の(大きな)4羽の白鳥×2。レヴァツォフにフィッシュダイブしたのはシャコンか、エイマンか。普段こういうおふざけをしなさそうなモローやエイマンの白鳥姿が見られたのが嬉しかった。美形のモローはそのままプリマでしたw


・ローズアダージョ ゴメスがオーロラ姫、アッツォーニとサレンコが従者でローズアダージョ部分と、最後に誕生日ケーキが登場し、みんなで歌ってお祝い。ゴメーロラ姫がロウソクの火を吹き消すと、ケーキに顔を埋められてクリームだらけになる、というオチ。
ABTのオーロラ姫衣装に似せて作られたドレスに金髪カツラにティアラ、そして超絶ポワントワーク…ユーモアと本気のバランスが最高のゴメーロラ姫!完璧に姫だったわ!ロンドンでマシューボーンの舞台に出てて、そのまま日本に来て、こういう「お遊び」をいつ練習してるんだ…すごい人だなあと、笑いながらも感動しました。

指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス  
管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:フレデリック・ヴァイセ=クニッテル (「三人姉妹」、「椿姫」、「ル・パルク」)



14時開演で、19時終演…実に5時間の長丁場でしたが、1時間ずつ休憩が入るから適度にリラックスしつつ集中力を持続できるし、なにより次から次へと世界のトップダンサーが出てくるので、飽きることなく興奮したまま走り続けた感じです。ほんとうに、楽しかった〜〜!次は3年後、そしてその2年後の東京オリンピック開催年にも特別企画として開催予定とか。楽しみです。