第14回世界バレエフェスティバル  <ガラ> 8/16(日)

また記憶が薄れゆくころに慌てて記すバレエフェスのガラ公演の感想です。



■第1部

「ドリーブ組曲
振付:ジョゼ・マルティネス/音楽:レオ・ドリーブ
リュドミラ・コノヴァロワ マチアス・エイマン
磐石カップル。エイマンにコノヴァロワは少し大きいパートナーだと思うけれど、安心して見ていられる。ドリーブ組曲の衣装はアニエス・ルテステュのデザインだけれど、コノヴァロワにはもっと豪華な衣装のほうが似合うな〜。

「三人姉妹」
振付:ケネス・マクミラン/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
サラ・ラム ワディム・ムンタギロフ

チェーホフ「三人姉妹」を元にしたマクミラン作品から、次女マーシャとヴェルシーニン中佐のW不倫のPDD。英国ロイヤルバレエのDVDだとバッセルとムハメドフが踊っています。その二人に比べてサラとムンタギロフだと大人の色気というところまでは出てないけれど、十分に切なくて、美しい踊りでした。ペールピンクのドレス、軍服と衣装も素敵です。

 
「雨」
振付:アナベル・ロペス・オチョア/音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ
ヤーナ・サレンコ ダニール・シムキン
ふたりの身体能力が如何なく発揮されてました。サレンコはバリバリの古典でも、こういうコンテンポラリーでも踊りこなせるのがすごい。


「椿姫」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:フレデリック・ショパン
マリア・アイシュヴァルト アレクサンドル・リアブコ
念願のリアブコのアルマンを見ることができました!!もぉもぉ、完璧だった!わたしが思い浮かべる、心底優しくて、シャイだけれど秘めた情熱があるアルマン…はあ…(ため息)見てる途中で「これ…この記憶は冥土の土産になるやつだ…」と思いました(笑)アイシュヴァルトのマルグリットも知的で媚びない強さと、不安気な少女の瞳を併せ持っていて、とてもよかった。ああ、全幕で見たい〜〜。



■第2部

「ヌアージュ
振付:イリ・キリアン /音楽:クロード・ドビュッシー
ディアナ・ヴィシニョワ マルセロ・ゴメス
ゴメスはソロでも繊細な踊りをするけれど、サポートも本当に丁寧で、相手を輝かせるダンサーなんだなあ…ヴィシニョーワとの信頼関係がこちらにも伝わってきました。


カルメン組曲
振付:アルベルト・アロンソ/音楽:ジョルジュ・ビゼー/ロディオン・シチェドリン
ヴィエングセイ・ヴァルデス ダニーラ・コルスンツェフ
華やかな雰囲気を持つヴァルデスにカルメンはぴったりでした。A・Bプロともに黒子役に徹していたコルスンツェフが、ここでは輝いていた。あら、こんなにかっこいい踊りをするのねえ〜!と開眼しました。

「ル・パルク」
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ /音楽:ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト
イザベル・ゲラン マニュエル・ルグリ
今回のバレエフェスはイザベル・ゲラン、それに尽きると確信しました。Bプロの陽気でチャーミングな「こうもり」から一転、「ル・パルク」では大人の愛の顛末を短い時間で表現しきってました。ゲラン本人は清廉なイメージが強いのに、踊るとさまざまに変容して、すごい表現力でした。つま先の美しさも群を抜いていた!



「さすらう若者の歌」
振付:モーリス・ベジャール/音楽:グスタフ・マーラー
オスカー・シャコン フリーデマン・フォーゲル
シンクロしてるようで対照的な振り付けと、二人が持つ雰囲気がそのまま「光と影」という印象でなかなかよかったです。フォーゲルが無垢で無知な若者、シャコンが現実の厳しさを悟らせる使者とも見て取れました。カーテンコールでは二人が肩を組んだり、ハグする様子が可愛かったです。



■第3部

ウロボロス
振付:大石裕香 /音楽:ヤン・ティルセン、ヨハン・パウル・フォン・ヴェストホフ、アレックス・バラナウスキー
シルヴィア・アッツォーニ アレクサンドル・リアブコ
夜会服を着て、仮面をつけた人形に命が吹き込まれてゆく物語。作品の世界観と、それを存分に描き出す二人の表現力が素晴らしくて、思わず涙がでました。いつまでも見ていたいダンサーだな、と改めて思いました。来年の来日公演が非常に楽しみです!

白鳥の湖」より "黒鳥のパ・ド・ドゥ"
振付:マリウス・プティパ /音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
マリーヤ・アレクサンドロワ ウラディスラフ・ラントラートフ
面白かった!この二人のパートナーシップは奇跡のようで、見てるだけで幸せになります。アレクサンドロワのオディールは気品があり、傲慢で、まさに高嶺の花。その花に臆面もなく恋焦がれ、身を捧げるラントラートフのジークフリード。オディールに騙されたままでも、十分ハッピーになりそうな王子でした(笑)

ハムレット
振付:ジョン・ノイマイヤー /音楽:マイケル・ティペット
アンナ・ラウデール エドウィン・レヴァツォフ
ラウデールのノイマイヤーダンサーぶりがわかる作品でした。レヴァツォフの演技力はもう少しほしいところですが、まだ若いのかな。

 
シェエラザード
振付:ミハイル・フォーキン/音楽:ニコライ・リムスキー=コルサコフ
上野水香 イーゴリ・ゼレンスキー
ゼレンスキー、こんなに踊れるのに、なんでBプロあれにしたの!!とツッコミたかったです(笑)セクシーな奴隷役でした…ごちそうさまでした…

「ヴォヤージュ」
振付:レナート・ツァネラ /音楽:ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト
ウラジーミル・マラーホフ


■第4部

「ジゼル」
振付:ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー /音楽:アドルフ・アダン
アリーナ・コジョカル ヨハン・コボー
コジョカルのジゼルはいいねえ…献身的な愛が伝わってくるし、空気のように軽く儚い雰囲気がよくでてる。

「タンゴ」
振付:ニコライ・アンドロソフ /音楽:アストル・ピアソラ
ウリヤーナ・ロパートキナ
バレリーナのなかのバレリーナ」という印象でABプログラムともにチュチュ姿でしたが、これは黒サテンのシャツにスーツ、中折れ帽という男装姿でシャンソンを踊りまくるソロ作品でした。もおね、ハイレベルな宝塚というか、黒燕尾着て大階段から羽根背負っておりてきてほしかったです。すっごくかっこうよかった。こういう作品も踊るのか…と、見る目が変わりました。
 

「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:フレデリック・ショパン
オレリー・デュポン/エルヴェ・モロー
眼福眼福。でも、なんだろう…来日全幕公演のときもそうだったのだけど、この二人の「椿姫」って感情が伝わってこないんだよな…。いちばん切ない黒PDDであっても。

ドン・キホーテ
振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス
ヤーナ・サレンコ スティーヴン・マックレー
ロイヤルの3幕の衣装は白地に金糸の結婚衣装なので、赤毛・色素薄い系の二人には本当によく似合ってゴージャス!テクニックも素晴らしくて、フェスティバルの大トリを飾るのにふさわしい組み合わせでしたね。キャスト変更を受けて今回サレンコは各日2作品は踊る大活躍ぶりで、しかし疲れも不調も見せず毎回クオリティも高くて、感心しました。マックレーはいつ見ても完璧。鉄壁。



■第5部(ファニーガラ)
カルメン エスカミーリョパートをヴァルデスがチョビ髭つけて踊りました。

・瀕死の白鳥 コルスンツェフが白鳥に。大柄なレヴァツォフもチュチュ(笑)それだけでも可笑しいのに、指揮者のオブジャニコフさんまで天使の輪と羽根をつけて登場して、その荷台をコルスンツェフがゼエハアしながら引っ張ってくるという。最後はコルスンツェフ白鳥が天使指揮者に射られて絶命するというオチ…。シュール。

・お嬢さんとならず者 ラントラートフが「お嬢さん」アレクサンドロワが「ならず者」で、ラントラートフの箱入り娘、「ええとこのお嬢さん」ぶりが素晴らしくて、ちゃきちゃきしてるAプロアシュレイよりも可憐だった(笑)。アレクサンドロワはならず者というよりは「いたずら小僧」って感じの可愛らしさ。

・こうもり マラーホフがベラ、アイシュヴァルトとコノヴァロワがウルリック。マラーホフさんの安定のポワントワーク…そして美脚…生き生きしてたわ!

・4羽の白鳥×2 舞台左からピカチュウつなぎにチュチュを付けたシムキン、レヴァツォフ、シャコン、エイマン、マックレー、フォーゲル、リアブコ、モローの8人の(大きな)4羽の白鳥×2。レヴァツォフにフィッシュダイブしたのはシャコンか、エイマンか。普段こういうおふざけをしなさそうなモローやエイマンの白鳥姿が見られたのが嬉しかった。美形のモローはそのままプリマでしたw


・ローズアダージョ ゴメスがオーロラ姫、アッツォーニとサレンコが従者でローズアダージョ部分と、最後に誕生日ケーキが登場し、みんなで歌ってお祝い。ゴメーロラ姫がロウソクの火を吹き消すと、ケーキに顔を埋められてクリームだらけになる、というオチ。
ABTのオーロラ姫衣装に似せて作られたドレスに金髪カツラにティアラ、そして超絶ポワントワーク…ユーモアと本気のバランスが最高のゴメーロラ姫!完璧に姫だったわ!ロンドンでマシューボーンの舞台に出てて、そのまま日本に来て、こういう「お遊び」をいつ練習してるんだ…すごい人だなあと、笑いながらも感動しました。

指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス  
管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:フレデリック・ヴァイセ=クニッテル (「三人姉妹」、「椿姫」、「ル・パルク」)



14時開演で、19時終演…実に5時間の長丁場でしたが、1時間ずつ休憩が入るから適度にリラックスしつつ集中力を持続できるし、なにより次から次へと世界のトップダンサーが出てくるので、飽きることなく興奮したまま走り続けた感じです。ほんとうに、楽しかった〜〜!次は3年後、そしてその2年後の東京オリンピック開催年にも特別企画として開催予定とか。楽しみです。