Globe to Globe Hamlet @さいたま芸術劇場小ホール 8/19(水)

イギリスロンドンのグローブ座がシェイクスピア生誕450年を記念して2014年4月から2年間かけて205ヵ国をめぐるワールドツアーをしています。そのツアーカンパニーがとうとう来日し、8/19、20にさいたま芸術劇場で公演しました。わたしは一日目の19日の公演を見てきました。


キャスト
ハムレット:ナイーム・ハヤット(Naeem Hayat)
クローディアス/先王/旅役者の座長:ジョン・ドゥーガル(John Dougall)
ガートルード/旅役者/墓堀人2:アマンダ・ウィルキン(Amanda Wilkin)
ポローニアス/墓堀人:ラウィリ・パラテネ(Rawiri Paratene)
レアティーズ/ギルデンスターン/オズリック:ベルース・カーン(Beruce khan)
オフィーリア:ジェニファー・レオン(Jennifer Leong)
ホレイシオ:トム・ローレンス(Tom Lawrence)
ローゼンクランツ:マシュー・ロメイン(Matthew Romain)


キャストクルーは12人で、この日は8人の役者とミュージシャンが1人と舞台のセット(というかケース)を配置換えする人が1人で…10人がステージにいました。ハムレット役以外は日替わりでいろんな役を演じます。上記は覚えてるだけの役名を書いたけれど、本当はもっと掛け持ちしています。それだけでも驚きますけれど、劇中の効果音や音楽もすべてキャストがその場で演奏します。開演前にキャストが登場し、フィドルやバウロン(アイルランドの太鼓)を奏でながら歌います。

これはロンドンのグローブ座での映像だけれど、ワールドツアーでも同じ曲が演奏されました。2011年の公演、ハムレット役はジョシュア・マクガイル(映画「アバウトタイム」のローリー役)。


セットは2本の細い柱、ロープを渡し赤いカーテンがかけてあり、劇中劇のときは幕として、またはクローゼットシーンなどの部屋のカーテンとして使われます。壁には衣装や楽器が掛けられ、椅子やテーブルや墓などは機材運搬用のケースが上手く使われていました。暗転がないので、場面の転換は明るいまま行われます。ちょっとしたムーブメントを加えながらキャストがセットを移動させる手法は、去年来日公演を見た「Once」でも取り入れられていましたが、古くからある方法なのかなあと思いました。シェイクスピアの時代には暗転などなかったでしょうし。

衣装についても、何役も演じるために上着だけで端的にその役を表していたり、役から役への繋がりがスムーズであるように配慮されており、人員、物資ともに必要最低限、ミニマムな舞台でした。それなのにチープな感じや稚拙な感じは全くなく、全編に渡たり目から鱗がボロボロ落ちる舞台体験でした。面白かった!


演出で一番好きなのは、最後の最後。主要な登場人物が死んでいく陰惨な幕切れからカーテンコールへの繋がりです。たいていの公演では幕が下りて、再び上がったときには「生き返っている」(笑)わけですが、グローブ座は幕が下りないので、終演後に音楽が流れ、オフィーリア役の俳優が死んだキャストひとりひとりを踊りながら触って「生き返らせ」ます。それはまるで死者の魂を天上へ送るようでもあり、感動的でした。生き返ったキャストたちは踊りを続け、終演の挨拶になります。これは、それまで鬱々としたハムレットの虚構の世界にどっぷりと浸っていた観客にとっても現実へ戻る手立てにもなり、気持ちがいくぶん軽くなりました。


本当に楽しかったです。こんなに素晴らしい舞台を見られてよかった。しかし今回はビザの関係なのか、チケット代を取ることができないという事情があった公演でした。そのため終演後には寄付を募るためにキャストがロビーに出てきてくれたり…ささやかな金額ですが、少しでも助けになれば…と寄付してきました。


TwitterTumblrのワールドツアーアカウントをチェックしていると、え?そんな国まで?というような場所(例:ソマリランドハルゲイサ)や、劇場もさまざまでホールのような大きなところから野外劇場で土砂降りに見舞われたり、衣装などが届かずにそのまま演じたとか、もう…ツアーのほうもシェイクスピア劇に負けず劣らずドラマチックな毎日という印象です。

あと1年、皆さんが元気で、無事にツアー完遂できることを祈っています。



ワールドツアー1年目のトピック動画


ホレイシオ役が素晴らしかったトム・ローレンスさんのインタビュー

ポローニアス役だったラウィリ・パラテネさん(左)とクローディアス役だったジョン・ドゥーガルさん(超かっこいい)。ほんと、2年もツアーで家に帰れないなんて…想像するだけで大変だ。