上原ひろみfeat.アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス@東京国際フォーラム

わたしは幸せを感じているときに「この幸せは長く続かない」と思ったり、まだ手に入れてもいないものを「失った」かのように嘆くことはないのだけれど、なぜか今日に限っては、ライブが始まるまえから「あぁ今年最後のひろみのライブ…」などとやけに淋しくなっていた。

でもそれは予感だったんだな、とすべてが終わればわかる。とてつもないステージでした。日本人はシャイで、観客としての反応が乏しいとよく見聞きするけれど、今夜のライブの、本編最後の"In Between"の一音が終わった瞬間の、聴衆5000人が、反射的としか言いようがないすばやさと熱意で総立ちになった光景を観てしまったからには、「シャイ」なんて言葉じゃ片付けないよわたし。それくらいの演奏してみなさいよ!って強気になる(笑)そのあとのアンコールまでまったく衰えない拍手とともに、一生刻まれた。楔を打ち込むような演奏だった。


1曲目から違ったけれど、出色だったのは前作「Voice」からの"Delusion" と "Desire"、いつもと「違う場所」に行ったと思った。いろいろ越えた景色というかね、今思い出しても溜息が漏れるだけ。

第2部の"Labyrinth" "Rainmaker"も大好きな曲。そしてピアノソロの"Place to be"はひろみも泣きながら演奏してたけれど、わたしも嗚咽をもらさないように口をタオルで押さえて聴く始末。ひろみのピアノの音は本当に多彩で、キラキラしてるのだけれど(冗談でなく、色で見える音をしている)、Place to beはそこに温度まで感じる音だったし、ピアノ自身が朗々と歌ってるように感じた。

国際フォーラムははっきり言えば上等な音響ではないのだけれど、そういうの飛び越えてくる3人の演奏なのです。サイモン・フィリップスの2バスと、アンソニー・ジャクソンコントラバスギターと、ひろみのCFX、最強ですよ。力強い音!こんなにかっこいい音楽がこの世にあるんですよ!今回はサイモンの足元が見えた席だったので、バスドラ叩く足が!もぉかっこいい!!ライブ中、何度「抱いて!」と思ったことか(笑)

ひろみはMCで"Place to be"をレコーディングするときにNYまでわざわざヤマハの重鎮調律師、小沼則仁さんを呼んだ話をしてましたけれど、その小沼さん、今日も調律を担当されていた。カーテンコールでひろみが呼んだときにも車椅子で登場され、サイモンとひろみに肩を組まれて退場したけれど、歩行が難しいご様子で、もしかしたらご病気なのかしら…。3年前のツアーのときはお元気そうな写真がたくさんあるのだけれど。*1一日も早いご快復をお祈りしています。

今日ほど「ひろみよ生まれてきて、そして才能を引き受けてくれてありがとう!」と思ったことはないです。「才能」ってそれを最大にするための鍛錬をし続ける、そういう人生を引き受けるということ。凡人には到底できない努力をして、そこで得た恵みを他人に分け与えること。心から感謝します。サイモンのドラムと、アンソニーのベース、小沼さんの調律、そして観客を含めて今夜のステージに関わった人たち。


セットリスト

  1. MOVE
  2. Endeavor
  3. Brand New Day
  4. Delusion
  5. Desire
  6. Labyrinth
  7. Rainmaker
  8. Margarita !
  9. Place to be
  10. Suite Escapism "Reality"
  11. Suite Escapism "Fantasy"
  12. Suite Escapism "In Between"
  13. En 11:49PM