i-love-photography-talk-and-walk
今月は文化学園で「i-love-photography-talk-and-walk 写真を巡る連続トーク」*1という写真家の講義がありまして、昨日はわたしが学生時代から好きな佐内正史さんが講師、しかも聞き手としてミュージシャンの中村一義くんが来るというんで、もちろん行きました。
そもそもわたしが今現在好きなもののほとんどは佐内さんが始まり。佐内さんの写真が表紙だったから角田光代の本を手にとり、角田さんと対談していた高野秀行さんの本を読み始め、高野さんとエンタメノンフ部で仲の良い内澤旬子さんの本…とつながり、音楽方面では佐内さんの写真がジャケットだったから中村一義のCDを買った。
そして中村くんのバンドのドラマー玉田豊夢を好きになり、そのトムくんが小谷美紗子とピアノtrioをやり始め、キーボードの池ちゃんがレキシを作り、ライブで大笑い…と。でも、その佐内さんの写真の、何が好きなの?と訊かれると、よくわからない。
色が好き、質感が好き、光が好き、対象物の選び方が好き、構図が好き、といろいろ理由は挙げられるのかもしれない。けれど、言語化できないようなところで彼(の作品)を信頼してしまっている、写真を見ているだけなのに、そう、わたしに思わせる。
佐内さんと中村くんとはデビュー当時から20年来の付き合いで、今回の佐内さんの『度九層』と中村くんの『対音楽』は対をなす作品で、ふたりで全く知らない街へ出かけて ”辻褄の合わない夢のような””パラレルの世界”を行き来していたらしい。
佐内「これ中村くんぽいなあ、と思いながら撮った写真には何も言わなくとも中村くんが反応する」中村「僕たちは根幹が同じなんですよね」と。どこのラブラブカップル(笑)と思ってしまったけど、でも、ほんと二人は表現方法は写真と音楽で違うし、雰囲気だって全然違うし、共通点なんか外からは全くわからないけれど、ふたりだけに通じるパラレルワールドがあって、そこで二人だけの記憶をつくってるんだろう。
この日は佐内さんの『度九層』の全作品を解説してくれました。佐内さんには1冊『シャンプーリンス』という詩集のようなものがあるけれど、写真集にはキャプションなどの言葉を付けないので、自身の作品を語るのは本当に珍しいことで、興奮した。
最近は”物質と一体化するような感覚”があるそうだ。”名前は要らない、まだ石にはなっていないけれど、自分でなくていい””雰囲気なんか一切ない、ギリギリの写真を撮ってしまう、もはや対象物も考えていない、写真機そのものになってしまいそうになるときがある””いつもは流れを意識するけれど、今回の『度九層』は鼓動を意識してページを考えた”
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最後の桜の花びらに囲まれたベートーベンのデスマスクは中村くんのおじいちゃんの遺品で、雨上がりで、花びらが地面にこびりついていたのに、カメラを構えた頃に陽が射してきて、風がふわっと吹いて、1枚だけ花びらがマスクの目元にかかった。ぞわっとした瞬間だった、と中村くん。
中村くんのおじいちゃんが亡くなってからの、そこが起点となってるようなアルバムなので、写真も棺桶をイメージするような意識が多かったそうだ。
ほかにもドキドキするような話がたくさんあったなあ。写真集の3枚目は渋谷のビルの上から撮った夕景なのだけど、それを観るときに”7時になったらカーテンを開けようと話してたんだよ、ちょうどこの写真と撮ったときと同じ色、空の青白いのがビルの窓に写って、全部が空だなと思う”と。新宿の夜景を観ながら。
写真のプリントは京都でやっているので、現像の旅に新幹線で行く。静岡あたりの車窓から幼い頃に暮らしてた場所が見えるそうで、”当時の風景を想像のなかで歩いているうちにお母さんの匂いを思い出して、そしてどんどん自分は小さくなって、お母さんのあそこを通ってお腹に返っていった。京都に着いたころにはムラムラしてたよ”と。なんの話(笑)!
佐内さん、やっぱり好きだわ。久しぶりに押入れから写真集など出してきて記念撮影したのが一番上の写真。『生きている』『message』は大事な作品です。
そして数年前、佐内さんのお友達と偶然知り合い、その方のお家に遊びに行ったとき「これ佐内くんがうちに置いていったやつ、あげるよー」とたくさんあったガチャガチャの仮面ライダーフィギュアのなかから選んだショッカーも一緒に撮影(笑)世界は繋がっているなあ〜。ふふふ。
*1:http://i-love-photo.eyesencia.com/ それにしても講師がすごい面々