内澤旬子×高野秀行トークライブ


内澤旬子さんの『身体のいいなり』刊行イベントへ行ってきた。わたしの敬愛する辺境作家・高野秀行さんとのトークショー。高野さんも『腰痛探検家』という腰痛本を出したばかりなので、お二人の身体にまつわるお話を中心に、今後の活動などを1時間ちょっとお話された。以下、覚えてる限りで。
『身体のいいなり』を読んでの高野さんの感想は、「治療費などお金について執拗に書いてあるのがおかしい」「出会う前の内澤さんは別人だったのかという驚き」「乳癌と知ったあとに治療法などをあれこれ調べないところがいい」だそうです。
『身体のいいなり』は小さい頃から虚弱体質な内澤さんが人ごみに酔い、息切れして都内の坂道を登れず、腰痛やアトピーのせいでヒールやお化粧などオシャレとは無縁、もちろんお酒も飲めずという生活をしていたのに、乳癌で全摘したあと身体が入れ替わったか!?と不安になるほど*1健康になったことが書かれているのですが、高野さんはその新・内澤さんになってから出会ったそうで、過去の内澤さんがそんなだったとは想像だにしなかったらしい。わたしは以前の情熱大陸も見逃していたし、内澤さんのお姿を知らずに『世界屠畜紀行』など読んでいたのだが、昨日初めて拝見して「女優か?モデルか?」と見まごう美しさにびっくりした。線を細くした桐島かれん、知的にした田丸麻紀、とかそんな印象。
「治療法をあれこれ調べない」「保険診療の範囲内での治療にとどめる」というのは読んでいてわたしも共感した。ガンは情報量が膨大で素人が調べてもキリがない、そんなことで思い悩んでいるくらいなら楽しいと思うことに注力しようというの、思っていても実践するのは難しいぶん、それができた内澤さんはやはり肝が据わってると感心しきりの高野さん。逆に内澤さんは『腰痛探検家』を読み、調べまくって治療しまくってるなー!と驚いたそうだ。たしかに高野さんは辺境作家などという無謀なことを数々やっているけれど、とても真面目な人なんだと、著作を読むたび思います。真剣に「人のやらないこと」をやってるもの(笑)

元気になったいま、何をやりたいか?と内澤さんへ質問したら、去年は原稿書きばかりで体力が有り余っているから、また豚を「飼い喰い」したい!*2豚小屋から作って、コンクリートこねたい、鉄柱建てたい!と答えてくださったのだけど、そのガテンな願望には笑ってしまった。しかし、その後ツイッターでも「なんかこう、筋肉の使いどころを持て余してるんですよねー。豚小屋を建てている時の充実感が忘れられず……。地獄のように忙しかった日々なのに」と返信いただいて、笑い話なんかじゃなく、身体を動かせる歓びがひしひしと伝わってきた。

最後にお二人の著作にサインをいただいて帰ってきた。写真は「乳癌気をつけて」のメッセージなのか?おっぱいに矢印のイラストつき。内澤さんの『センセイの書斎 イラストルポ「本」のある仕事場』(河出文庫)も購入した。

*1:不安すぎて生まれて初めて占いに行ったそうだ。その混乱ぶりがうかがえる

*2:以前豚を3匹飼い育て食べた。詳しくは月刊「世界」で連載中