角田光代×松尾たいこトークショー@青山ブックセンター本店


昨日は角田さんと松尾さんの共著『なくしたものたちの国』刊行記念トークショー&サイン会に行ってきた。
角田さんは今年1月の長島有里枝さん『家族の肌触り』出版記念トークショーぶり。スキニーをエンジニアブーツにインして、腰には極ミニ丈プリーツ巻きスカート、白い七分丈のTシャツにタイトフィットなブレザージャケット、首元にはボリュームのあるアフガンストール。黒が基調のコーディネートで、ロックな感じ。
松尾さんはエレガントなラインの女性らしい黒いワンピースにショッキングピンクのタイツ、ウエッジソールのサンダル。声が可愛らしく、開口一番「トークショーは初めてですが、頑張ります!」と挨拶していたのもほほえまし。

企画から関わっている編集者の女性が司会役でおニ人に本の経緯やプライベートなどを質問し、さらに会場の客からも質問を募って1時間半くらいの会だった。こういう会に参加してると、主催者側の不手際とかヘタさに気の揉めることがたまにあるのだが、司会の方のお話がとても上手で、安心してお二人の話に集中できた。
角田×松尾コンビは『Presents』以来2冊目。まず今回は松尾さんの絵に小説をのせようという企画で、という流れの詳細は『なくしたものたちの国』のあとがきに書かれてあるので、各自読んでください。

今回お話を伺って印象に残っていること。
松尾さん編

  • 映画や本を読んで泣いたりするのはわざとらしくて好きじゃないけど、この『なくしたものたちの国』は初めて声をあげるくらい泣きじゃくった。
  • 数年前までスピリチュアルに拒否反応があり、占いさえも興味が無く、仲間内でそういう話になったら輪から外れていた。
  • 朝は苦手だけど毎日7時半頃には起きて、犬の散歩とジムで1時間トレーニングをこなしている。
  • なるべく美しいものだけ見るように生活している。
  • 絵を描く前はテーマから想起される言葉を列挙してイメージを膨らませる。
  • 「絵と小説を一人でやってみることはあるか?」の質問に、自分の絵に自分の言葉で説明することはない。
  • Sさんには「ずっと恋をしている」そうな♪

角田さん編

  • 松尾さんの絵には物語性があり、見ている人によって捉え方が全く違う。感情を湧き上がらせる力がある。
  • 小説を書くときに登場人物の顔や声は映像としてイメージされていない。ひたすら活字でのみ浮かぶだけ。
  • ドラマなど映像化されるものに関しては、原作が自分だということを忘れて楽しんでいる。
  • 嫌いなことを続けるコツは、1.向上心を持たない、2.嫌いだということを自覚する。これでマラソンもボクシングも続いている。
  • 「得意料理はなんですか?」と訊かれて料理名を答えられる人は、本当の料理上手ではない!
  • 「なぜ締め切りを守るのか?」以前『編集王』という漫画で「作家が締め切りを守らないばっかりに、編集者や校正者、印刷所のありとあらゆる関係者に影響が波及して、子どもの運動会に行けない親、恋人と逢瀬ができないなど、いろんな絆が危機に瀕する」というのを読んだときに震え上がったから。
  • 人間の汚いところ、醜い感情を見たい。自分のなかに嫌な感情があるとき、できればその感情を手放したくない。ずっと心において、目をそむけずになんとか言葉に定着したい。

角田さんの最後のお話は、小説家としての凄みを感じた。松尾さんも体調管理には細心の注意をされている様子だし、お二人の創作者としてのストイックさにただただ平伏。
今日はようやくゆっくりとこの本を読んだ。あらゆるものの声が聞こえる8歳のナリコちゃんの話、猫のミケが小学生の男の子となって再会する話がとくに好き。なにかを失くしたとき、誰かを失ったとき、わたしが心から欲するだろう言葉がつまっている。

なくしたものたちの国

なくしたものたちの国