ヤギと男と男と壁と

『ヤギと男と男と壁と』観てきた。
実録・アメリカ超能力部隊 (文春文庫)アジア未知動物紀行 ベトナム・奄美・アフガニスタン
不思議なことに原作『実録・アメリカ超能力部隊』(ジョン・ロンスン著 村上和久訳)とは昨年末に出あっていた。というのも、わたしの敬愛する辺境作家・高野秀行さんの著書『アジア未知動物紀行 ベトナム奄美アフガニスタン』のなかで、この本出てきてたのよ。アフガニスタンの未知動物「ペシャクパラング」調査の章で。
そんなことすっかり忘れてて、職場近くの映画館で「へんなタイトルの映画やってるなー」と興味を持ち、キャストが豪華なのと水曜日は千円という動機で観にいき、観てるうちに「あ!これなんか知ってるかも…」と帰宅してすぐ押入れから高野本を取り出してきたら、やっぱり〜。あぁ、すごい。わたしの興味って狭い…と妙な納得。

原作はノンフィクションだけど、映画はアメリカ軍の「トンデモ」な部分を強調してエンターテイメントとして仕上げていた。ベトナム戦争で帰還したあと「武器があったところで戦争には勝てない」と悟ったビル中佐(ジェフ・ブリッジス)が80年代のニューエイジ思想にどっぷりハマり、超能力や透視、心理戦などの非殺傷性兵器で「愛と平和の軍隊」を作ろうとして、アメリカ軍も非公式ながらその計画を認めていた、という過去のトンデモ話が次々開陳されて、映画館に一人だったら大爆笑したかった!というおもしろシーンがこれでもか、これでもかと腹筋を攻撃してくる(これはアメリカではどんな反応なのだろうか)。

しかし場面が2003年当時のイラクになるとそう笑ってもいられず。誰が「敵」なのか、何と戦っているのかもわからず、みながただ疑心暗鬼で、不安だから銃を持ち、銃を持つから撃ってしまうという無限ループの最悪な状態。そうなると、さっきまで観て笑っていたニューエイジ思想の「わたしたちは宇宙の一部です」とか「天然資源をむさぼらないアメリカになろう!」なんて言葉にすがりたくなるし、涙でるほど切なくなったさ。なんで“らぶ&ぴーす”にならんのかねえ、と。

ユアン・マクレガージョージ・クルーニーケビン・スペイシーとみな格好良い。セリフのある女性がたった1人しか出てこない。アメリカ軍をテーマにした映画ですがグロシーンはありませんので、女性にもおすすめします。これから地方に上映が広がるようだし、お近くまで来たら観てください。あ、レンタルで安くなってからでもいいですけど。

テーマソングのBoston 『More Than A Felling』懐かしい!