スペイン国立ダンスカンパニー@愛知県芸術劇場

スペイン国立ダンスカンパニーの愛知での公演に行ってきました。

  • 『Sub』 イジック・ガリーリ振付 エステバン・ベルランガ、ダン・ヴェヴォート、エレス・イラン、アルバロ・マドリガル、フランシスコ・ロレンソ、ルシオ・ヴィダル、アントニオ・デ・ロサ
  • 『堕ちた天使』 イリ・キリアン振付 サラ・フェルナンデス、エミリア・ギスラドティル、エリザベト・ビオスカ、カヨコ・エバーハート、マル・アギロ、ジェシカ・リアル、アリ・パパシアン、アグネス・ロペス
  • 『ヘルマン・シュメルマン』 ウィリアム・フォーサイス振付 ナンディタ・シャカルダス、エウヘニア・ブレッツィ、ナタリア・ムニョス、アンソニー・ピナ、ジャコポ・ギアルダ、ノエリー・コンジョード、アレッサンドロ・リガ
  • 天井桟敷の人々』より ジョゼ・マルティネズ振付 セ・ユン・キム、エステバン・ベルランガ
  • 『マイナス16』 オハッド・ナハリン振付 ハビエル・モンソン、エミリア・ギスラドティル、ダン・ヴェヴォート、アイダ・バディア、エリザベト・ビオスカ、アリ・パパシアン、ジェシカ・リアル、マル・アギロ、サラ・フェルナンデス、カヨコ・エバーハート、アグネス・ロペス、ルシオ・ヴィダル、アントニオ・デ・ロサ、エレス・イラン、アレックスマニェ、マティア・ルッソ、フランシスコ・ロレンソ

パリオペラ座エトワールだったジョゼ・マルチネズ(今回の来日公演ではスペイン語読みでホセ・カルロス・マルチネスと表記されることも多くなったかな?)が芸術監督になってから初来日。12/5・6に神奈川公演もあるのですが、あいにく他の予定で埋まっていたので思い切って名古屋公演を見に行きました。初の日帰りバレエ遠征!


イジック・ガリーリ振付「Sub」…これはむちゃくちゃかっこよかった!私が見たかったのこういうダンスだわ…!って思うほどに。ローマの戦士みたいな上半身裸の男性だけの舞踊。照明の明るさもギリギリまで落として、靄で煙る森のなかで踊られているのを目撃してしまったような幻想的な空間だった。限られた光がダンサーの筋肉の影をより濃くし、汗を光らせたいへん艶かしい。
まず雷鳴が轟き、中央にぼんやりとした筋のような光の下でひとりが舞い、そのあとペアで、お互いの力を競ったり高めたり委ねあったりカポエイラような格闘技から派生した踊り。そのうち7人になるのだけど、同じ振り付けを時間差で踊っていく場面では、7人は実はたった一人なんじゃ…と思えるほど分身のようにも、残像のようにも見えた。
男性の筋肉ってこんなに美しかったかあ…と惚れ惚れした勢いで泣いてしまった。野性動物を見ているような神聖さがある。もしくは闘いに行く前の鼓舞、神に捧げる儀式のようにも感じられた。
陰影礼賛な作品。明かりが十分でないことにより一人ひとりの身体の輪郭は曖昧になり、7人が一体化していく。そしてときおり光る汗が非常に耽美でした。これだけで名古屋まで来た甲斐があった!


次が女性だけの「堕ちた天使」、リズムが増幅されるごとに動きが多様になっていくシンプルだけど面白い作品。全員が記号のように踊っているかのように見えて、ほんの短いソロになるとダンサーそれぞれの個性・色が見える。面白そうな人が多いなっと感じた。


しかし「ヘルマン・シュメルマン」での女性ダンサーたちは霞んでしまった印象。ジョゼが芸監になってからポワント回帰したというので、単に得意ではないってことなのか?所々リズムを取りこぼしているように見えた。対して男性ダンサーたちはここでも良かった。ゆるんだ舞台がまたピンとする。男性ダンサーが出てくると完全にそちらに目を奪われた。

天井桟敷の人々」はジョゼがバチストを踊る予定だったが肩の調子が悪いとのことで(肩上のリフトがある)、代役としてプリンシパルダンサーのエステバン・ベルランガが踊った。
そのことを開演前にジョゼ自ら「日本語で!」お詫び+説明したのだが、それが超絶可愛かった…あんなに長い日本語を、メモ書きを読むにしても大変練習したのではないだろうか。ジョゼの口から発せられる「ごめんなさい」の愛らしさよ…。わたしの脳の決して削除されないファイルにしまっておくね…。
直筆お詫びのコピーも配られ、なんと細やかな心遣いをする人だろうと思った。バレエに怪我はつきもので、キャスト変更などいくらでもあり、正直そこまでしなくても…とも思うが、おそらく今回「天井桟敷…」 をジョゼが踊る!ということが公演の目玉で、ジョゼ人気頼りの日本のみの企画だったからなのだろう。しかし結果的にはカンパニーのダンサーだけで上演できたことのほうが大きな収穫だったし、良かったのではないかと思った。

そして代役だったエステバン・ベルランガは「Sub」のソロを踊ってた人。代役というのもあり、振りが体に入ってる感じが薄かったけれど、イングリッシュナショナルバレエでソリストとして活躍してたこともあるそうなので、クラシックのテクニックも十分だった。
また音楽がピアノ伴奏だったのは嬉しかった。今回音楽はすべてテープでの上演予定だったが「物語の一部分を切り取ると失われる作品全体(天井桟敷の人々は物語バレエ)の情緒を補うためにピアノ伴奏にした」とアフタートークでジョゼがその意図を語った。


最後の「マイナス16」は文句なしの楽しさ!休憩中からパフォーマンスが始まるこの演目。客席とダンサーの掛け合い、反応で一期一会の舞台が作り上げられる。こういうの似合うねえ!ほんとにかっこ良かったし、名古屋のお客さんもノリがよくて楽しかった!満足。新幹線乗った甲斐あったぜ。神奈川公演に行けないから名古屋にしたんだけど、Subはまた見たいなあ…。

あとCNDのvimeoにアップされてた「アパルトマン」とかも観たい。この公式にあがってる動画みてると、カンパニーのレパートリーの豊富さに驚く。わずか数年前までポワント履いてなかったカンパニーとは思えない。

男性ダンサーのレベルが非常に高かったなあ。体がほんと惚れ惚れする筋肉で、日々の研鑽をうかがわせる。

最後にジョゼ可愛さエピソード。アフタートーク登場のとき、まず司会役の唐津さん(劇場のシニアプロデューサー)が出て、ジョゼを呼び込むはずだったのに、ジョゼったら唐津さんのあとについて歩いてきちゃって、唐津さん後ろ振りかえったらジョゼがいるから「え!」ってなってた(笑)そしてジョゼは一旦ソデに戻って登場し直したwカンパニーのFacebookのアルバムにも日本での写真がたくさんあって、滞在を楽しんでる様子がわかって嬉しい。また来日公演してください!必ず行く!