ロイヤルエレガンスの夕べ @日本青年館ホール

「ロイヤルエレガンスの夕べ」、初日8/8(金)の公演を見てきました。
ラウラ・モレーラのパートナーのジャスティン・マイスナーが代表を務めるダンスツアーズプロダクション主催のガラ公演で、英国ロイヤルバレエ団とバーミンガムロイヤルのダンサーたちが普段日本では見られないようなバラエティに富んだ作品を披露してくれました。

パンフレットにはダンサーだけでなく、披露される作品の解説や振付家のプロフィール、ラウラが「なぜこの作品を選んだのか」、そして演じるダンサーたちによる作品への思いなど詳細に記されて、たいへん充実してました。しかもおまけでオリジナルのクリアファイル(チャコットでも配布してたデザイン、マックレーとサラのをまた貰った♪)までつくサービスぶり!

ダンスツアーズプロダクションはバレエを学ぶ子供たちに海外でのサマースクールや、来日ダンサーたちによるレッスンを提供するかたちでさまざま支援しているため、とくに優秀な子は当日も舞台に立つチャンスが与えられたようですし、客席にも若いバレエダンサーたちがたくさんおり、普段わたしが足を運ぶバレエ公演とはひと味違う、若々しい活気とアットホームな雰囲気に包まれていました。

★第1部
 「真夏の夜の夢」よりパ・ド・ドゥ(オベロンとタイターニアのパ・ド・ドゥ)
振付:フレデリック・アシュトン、音楽:フェリックス・メンデルスゾーン、出演:ラウラ・モレーラ/ツァオ・チー

 「レクイエム」よりソロとパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン、音楽:ガブリエル・フォーレ、出演:崔由姫/ネマイア・キッシュ

 「エニグマ変奏曲」よりトロイトのソロ *日本初演
振付:フレデリック・アシュトン、音楽:エドワード・エルガー、出演:リカルド・セルヴェラ

 「コンツェルト」
振付:ケネス・マクミラン、音楽:ディミトリ・ショスタコーヴィチ、出演:佐久間奈緒/ベネット・ガートサイド

 「眠れる森の美女」より第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ、音楽:ピョートル・I・チャイコフスキー、出演:サラ・ラム/スティーヴン・マックレー

 「ルーム・オブ・クックス (Room of Cooks)」 *日本初演
振付:アシュリー・ペイジ、音楽:オーランド・ガフ、出演:ラウラ・モレーラ/リカルド・セルヴェラ/ネマイア・キッシュ


★第2部
 メタモルフォシス:ティツィアーノ 2012 「トレスパス」 よりパ・ド・ドゥ*日本初演
振付:クリストファー・ウィールドン、アラステア・マリオット、音楽:マーク=アンソニー・タネジ、出演:サラ・ラム/スティーヴン・マックレー

 「エリート・シンコペイションズ」よりスウィート・ハート
振付:ケネス・マクミラン、音楽:スコット・ジョプリン、出演:崔由姫/リカルド・セルヴェラ

 「アスフォデルの花畑」より第2楽章
振付:リアム・スカーレット、音楽:フランシス・プーランク、出演:ラウラ・モレーラ/ベネット・ガートサイド

 「ピーターラビットと仲間たち」よりまちねずみジョニー
振付:フレデリック・アシュトン、音楽:ジョン・ランチベリー(編曲)、出演:ダンスツアーズ未来の星賞受賞者

 「ディアナとアクティオン」
振付:A・ワガノワ改訂(マリウス・プティパより)、音楽:リッカルド・ドリゴ、出演:佐久間奈緒/ツァオ・チー

 「Rotaryrotatory(ぐるぐる回る)」*世界初演
振付:クリスティン・マクナリー、音楽:ビョーク、出演:崔由姫、ダンスツアーズ未来の星賞受賞者

 「瀕死の白鳥」
振付:ミハイル・フォーキン、音楽:カミーユ・サン=サーンス、出演:サラ・ラム

 「QUIZAS(キサス)」 *日本初演
振付:ウィリアム・タケット、音楽:映画「花様年華サウンドトラックより「キサス、キサス、キサス」、出演:ラウラ・モレーラ/リカルド・セルヴェラ

 「チャルダッシュ」 *日本初演
振付:スティーヴン・マックレー、音楽:ヴィットーリオ・モンティ、出演:スティーヴン・マックレー


とくに印象に残ったものをつらつらと。

ラウラ&リカルド、サラ&マックレーのペアはとにかく素晴らしいパートナーシップでした!

ラウラ&リカルドは「キサス」が大人の魅力全開で、一緒に踊りたくなるとても楽しい作品でした。ラテンの音楽に身をゆだねながら、気が強くて手ごわいけど情に厚い女とダメなところもある優しい男の駆け引き。映画とかになりそうな関係性が見えてきたり、二人が暮らす街のざわめきが聞こえてきそうな雰囲気でした。

リカルドはソロ「エニグマ変奏曲」でも速い振付をさらりと粋に踊ってみせ、かっこよかったなあ…。
ラウラがタイターニアを踊ったアシュトン「真夏の夜の夢」、わたしはDVDになってるABTのを1度しか見たことがなく、そのときはパック役がすごい印象しか残らなかったのです。しかしラウラの踊りを見て「アシュトンのエッセンス」に気づいたというか、はっとしました。

この二人とネマイヤの「ルーム・オブ・クックス」はスティーブン・チャンバーの絵画を題材に創作されたもので、初演はラウラとリカルド、アダム・クーパー。19歳のラウラに振り付けられたにしてはとても重く、暗く、大人の情念うずまく…という感じの作品で、これこそ演劇を見ているような気分になりました。
わたしにはラウラとネマイヤが倦怠を迎えた夫婦で、リカルドがラウラをそそのかしてネマイヤの命を奪いにきた死神のように見えました。解釈次第で物語が如何ようにも作られそうな、エキサイティングな作品でした。


そしてサラ&マックレーは「眠れる森の美女」のグランパドドゥ。まさか古典中の古典、それも幸せいっぱいPDDで泣かされるとは思いもよりませんでした。テクニックには評判の二人なので、ソロのバリエーションも難易度高いことをさらりとやってのけ素晴らしかったのですが、そういう技術だけでなく、サラのオーロラ姫が本当にきらきらと発光していて、また気品と愛らしさに満ちていて、マックレーと手をとり合う仕草ひとつひとつが泣けるほど美しかったのですよ。はあ…この二人で「眠り」全幕見たいーー!

「トレストパス」は一変して身体能力を極限まで見せつけるコンテンポラリーで、これはどういうバランスで成り立ってるの??という、少しでもバランス崩したら大怪我しそうな危ういポーズもあるのですが、この二人だと事も無げなんですよね〜(感嘆!)

大トリを飾ったマックレーのタップはその技術力と音楽性、リズム感、すべてにおいて圧巻でした。人間業じゃないです…コジョカルガラのときも思いましたが、異次元のダンサー…(笑)


ユフィさんの「Rotaryrotatory」も好きです。ロイヤルのYou Tubeチャンネルに「くるみ」の人形の練習してるユフィさんが見られるのですが、こういう極端に緩急をつけたロボット的な動きを表現するのがとても上手いです。「エリートシンコペーションズ」のユーモアのある踊りも似合ってました(組んだリカルドもこういう演技とても上手)。去年ロイヤル・ガラで「春の声」を見たときに思いましたが、明るい、ポジティブな雰囲気を生まれながらに持ってるんでしょうね。そういうのが踊りに滲み出ています。ロビンズ振付「コンサート」のバレリーナ役とか見てみたい!とってもキュートだと思う。


映画「小さな村の小さなダンサー」で主人公を演じたツァオ・チーは、おお!くどい!(褒めてる)とまず思いました。ワッシーに次ぐクドさがあり、「ディアナとアクティオン」とても良かったです。佐久間さんも存在感のある大きな踊りができる方のようで、このペアも素敵なパートナーシップを見せてくれました。


どれもこれも素晴らしかった!楽しかった!!というのが大きな印象です。休憩時間30分だったので、正味2時間もなかったかな?という公演時間ではありましたけれど、短い作品であってもダンサーの個性が存分に発揮され、また作品によってイメージをがらりと変えて見せてくれるので、たいへん濃密でした。演劇の国イギリスで活躍するダンサーたちだけあって、みなさん演劇性が高いのです。抽象的な作品であっても物語る力がある。その作品の世界観を提示してくれるので、集中して楽しむことができました。満足!