NT Live 「The Audience」


演出:スティーヴン・ダルドリー 脚本:ピーター・モーガン
出演:ヘレン・ミレン、ジェフリー・ビーヴァーズ、ジョナサン・クート
『クィーン』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したヘレン・ミレンが再びエリザベス2世に扮し、 本来一般人には見る事のできない女王と国の歴代の総理大臣たちとの謁見(毎週火曜日)を舞台に繰り広げるドラマ劇。 エリザベス2世を描かせたら天下一のピーター・モーガンが脚本を手掛け、演出は『リトル・ダンサー』、 『めぐりあう時間たち』などの名匠スティーヴン・ダルドリー

http://www.ntlive.jp/program.htmlより引用

わりとずっと泣いてた。こういうのに弱い!弱いよ!自分の意思を無効にする立場に生まれつき、葛藤してなんとか受容して、生き残って、ようやく辿りつく境地の力強さ。どう折り合いをつけるか、他者への優しい眼差しを保ち続けられるか考えたら、泣けて泣けて…。

これ別に女王という立場に限らず、世の中には自分の意思の反映なく留まらざるを得ない人っていると思うの。そういうわたしとは違う誰かのことを想像して、また泣いた。

わたしは年々、人が祈ることの尊さに圧倒されてしまうのですが、女王がひざまずいて祈ったときや、21歳のころのアフリカでのスピーチ、連邦に我が身を捧げるという言葉の重さにあのときは気づいてなかったかもしれない、その様子を真後ろで身を重ねて聞いてる今の女王のシーンは、痛みさえ感じるほどでした。


実際はイギリスらしい皮肉な笑いもたくさんあり、それぞれの首相の特徴をつかんで演じてるから(事前に各首相の演説やインタビュー動画を見て予習していたので、ほんとに似てました)、イギリスの観客はどっかんどっかん笑ってましたし、映画館でも馬鹿ウケしてる人がいた(イギリス通なのか?)。しかし、そういうバックグラウンドがなくても軽妙な会話はとても楽しかったです。

「施されることは侮辱でしかない」ってサッチャーさんの言葉や、メージャーさんの学歴コンプレックス、ウィルソンさんの任命式に家族できちゃうわ、初謁見のときにポラロイドカメラ持ってきたり、女王とは「住む世界が違う」人たちが首相になって顔を合わせて話すわけです。そのギャップのおもしろさ。筋金入りの「格差社会」、英国の階級社会のさまをうまくエグってるなあと感心しました。

脚本家のピーター・モーガンは「会話は想像でしかない」と言いつつも、各関係者にも取材してリアリティのあるもののようでした。売られているスクリプトはライブ中継されたものと演出がちょっと違うそうですが、買おうかなー。あの会話をもう一度楽しみたいです。本当だったら2回、3回と映画館に通いたかったけど…。DVDも発売されないようなので…残念。


The Audience (English Edition)

The Audience (English Edition)