ロイヤルバレエ「冬物語」@ライブビューイング

4/29、映画館でロイヤルバレエの新作「冬物語」を観てきました。

プロローグ付・全3幕「冬物語」原作:ウィリアム・シェイクスピア
振付:クリストファー・ウィールドン、音楽:ジョビー・タルボット、美術・衣装:ボブ・クロウリー、照明:ナターシャ・カッツ、プロジェクションデザイン:ダニエル・ブロディー、シルク効果デザイン:ベイジル・トゥイスト、指揮:デヴィッド・ブリスキン

レオンティーズ(シチリア王):エドワード・ワトソン、ハーマイオニー:ローレン・カスバートソン、パーディタ:サラ・ラム、フロリゼル:スティーブン・マックレー、ポーライナ:ゼナイダ・ヤノウスキー、ポリクシニーズボヘミア王):フェデリコ・ボネッリ、羊飼い:ギャリー・エイヴィス、その息子:ヴァレンティノ・ズケッティ、アンティゴナス:ベネット・ガートサイド

冬物語―シェイクスピア全集〈18〉 (ちくま文庫)

冬物語―シェイクスピア全集〈18〉 (ちくま文庫)

予習でちくま版の戯曲読みまして、ポリクシニーズと厚い友情を築き、妻ハーマイオニーと仲むつまじく暮らしていたのにあるとき雷に打たれたように激変し、友人と妻の不倫を妄想し嫉妬の鬼となるレオンティーズにまず「???」となり、姫パーディタをボヘミアに連れていくアンティゴナスが熊に襲われて命を落とすのも「?」となり、最後に16年もハーマイオニーを匿い、レオンティーズが反省するのを見守ってきた侍女ポーライナ(アンティゴナスの妻)に褒美とばかりに家臣カミローとの結婚をすすめるレオンティーズにまた「????」となり、そんな夫を赦してしまう妻ハーマイオニーにも「???」となり、そして、この物語が「喜劇」として扱われてるのも「さっぱりわからない!!!」となって、あぁーやはりわたしとシェイクスピアのあいだにある壁は高い!そしてその壁はツルツルで掴むところがない。頑張ってものぼれない…と先日の「コリオレイナス」ライブビューイング(&映画版の「英雄の証明」)で痛感したことを日を空けずにまた思い知らせれたのですが、、バレエはすごくよかったです!


まずなんといっても主演のエドワード・ワトソン!「マイヤリング」でも思いましたが、彼はこういう苦悩の表現が本当にうまい!似合う!!ハマり役と言っていい。
1幕で好きなシーンは宮廷の庭園で突如、親友と妻が不倫してるのでは…と嫉妬に駆られるところ。レオンティーズの妄想と現実を交互に表現するのだけど、そのときの妄想(ローレンとフェデリコが露骨なほど艶かしく踊る)と、ギリギリと歯軋りして嫉妬の炎を燃やすエドの表情がすばらしい。


それと対極の2幕の主役のふたり、マックレーとサラは太陽の輝きで、きらきら若さと喜びに満ち溢れた踊り。お祭りのシーンでもあるので群舞も限界まで踊り狂って祝祭的、楽しかった。音楽も民族調のリズムと楽器を取りいれていた。


3幕はまた舞台がシチリアに戻り、子供と妻を失わせた自分の嫉妬心と浅はかな行動を後悔、改悛したレオンティーズのまえに捨てたはずの娘パーディタが表れ、仲違いをしたままだったポリクシニーズとも和解、そして死んだはずの妻が実は生きていた!という原作では大団円のシーンが、レオンティーズの後悔とハーマイオニーの赦し、埋められない時間を必死に取り戻そうというPDDで表現され、最後はポーライナがひとり残って、失われた命と時間、それらを繋ぎとめようとした自身の苦労に思いを馳せるところで幕が降り、とても余韻の残る感動的な終わり方だった。

この終わり方を見ても、やはり第2の主人公はポーライナなんだなと思う。16年ハーマイオニーを匿いながら王に進言をし支えつづけた重要な役。ゼナイダの演技力が如何なく発揮されてた。


舞台装置のスクリーンの使いかた(熊!!着ぐるみじゃなくてよかったw)、「不思議な国のアリス」同様にプロジェクションマッピングの巧みさもよかった。ちょっと難をつけるなら、衣装の色合いがあまり美しくないこと…。1幕のダークさ、2幕のフォークロアで溢れる色彩、という両者の差をつけ、かつハーマイオニーとパーディタが母娘であることの象徴としての菫色の衣装というのは理解できるのだが、色調がとれてないと感じた。完全に好みの問題とは思うけど。しかし、男性の衣装はかっこいいのよー。エドのドレープがたっぷり入ったコートに、ボヘミア側のスカート調だったりスリットが入った上着も。あとポーライナのカラー・カフスつきのドレスも素敵だった。うーん、こうして挙げていくとパーディタの衣装が恵まれてないだけかも。菫色に緑のペンダントリボンとか…ひどい組み合わせ。
それと正直、音楽はアリスと同じであまり耳に残らない。キラーノートがないというか…ダークな感情を表現していても美しい旋律というのはあるはずなのにな、という気持ちがした。


全体としては好きな作品。DVDが出たら買おうかな、と思う程度に。
余談ですが、、原作でも「レオンティーズは妻と友人のどちらに嫉妬してるわけ?」と疑問になるくらいポリクシニーズと仲が良いのですが、バレエでもエドとフェデリコがいっしょに踊るところは、ちょっとドキドキする感じです(笑)


クリエーション現場の風景とインタビュー。エドワードの身体能力と演技力があったからこそ作られた。バレエは「こういうことがありました」はできない、舞台ですべてを物語り、観客へ見せなければいけない。


重苦しい1幕とは打って代わって、若い恋人たちの喜び、祝祭的な2幕のリハ風景とインタビュー。マックレーの「宮島」Tシャツ(笑)ツイートではポカリスウェット粉末の写真をアップしてましたし、日本贔屓ですね。


作曲家のインタビュー。3幕すべてで違う曲調で、何度も書きなおしたくらい苦労した。はじめて使う楽器もあったし、舞台上で演奏する難しさもあった。