パリ・オペラ座バレエ「椿姫」3/23@東京文化会館

★3/23キャスト
マルグリット:アニエス・ルテステュ、アルマン:ステファン・ビュリオン
デュヴァル氏(アルマンの父):ミカエル・ドナール
マノン・レスコー:ローラ・エッケ、デ・グリュー:ヴァンサン・シャイエ

プリュダンス:サブリナ・マレム、ガストン:クリストフ・デュケンヌ、オランピア:レオノール・ボラック、公爵:ローラン・ノヴィ、N伯爵:シモン・ヴァラストロ、ナニーナ:クリスティーヌ・ペルツェー
マノンの求婚者:アレクシス・ルノー、ファビアン・レヴィヨン、ヤン・サイズ
マルグリットの求婚者:アルノー・ドレフェス、アントワーヌ・キルシェール、フランチェスコ・ヴァンタッジオ

待ちに待ったアニエスのマルグリット!たいへん楽しみにしてました。

ブログやツイッターもそうだけど、日記せっせと書いてるって絶対モテない行為だと思うんです。わたし調べですが、モテる人って文章書かない。この場合のモテるは客観的にモテるかどうかでなく自覚の問題ですけれど、何かしらのコンプレックスがないと文章を書いたりしないと思っているので、美貌の高級娼婦になっちゃったものの、マルグリットは実は非常に内向的で人付き合いなどうまくこなせない女性だと思う。そして、そういう内気な文学少女っぽいマルグリット像を出してるのはアニエスだけでした。気品があって女王然としてるのに、ほんの隙間に少女の顔が出る。1幕のPDDで感動したのはさすがだなあと思いました。

またステファンが演じるアルマンも内向的でじっとりした雰囲気を持ってるので、すごく似合ってる。怒りの表現も迫力があったし「走り」もよかった。リフトもスムーズで二人の「言葉」が聞こえるようだった。それに彼は踊ってないときの演技が細かくて良かったです。田舎でみんなが踊ってるときに後ろでマルグリットといちゃいちゃしてるのとか、2幕の乗馬から帰ってきたあと、椅子に残されたマルグリットのショールを手に取ったときと、椅子に座ってから2回の匂いをかぐとか(普通は座ってからの1回だけだと思う)、怒ってるけどマルグリットの帽子を手に取りやはり匂いかぐとか、黒PDD前にマルグリットのコートを脱がせたあとも匂いかいだりして(その後我に返って投げますがw)、わたしそういう変態じみた仕草好きだよ!!と思いました(笑)変態じみた、というのは冗談ですが、黒PDDでの怒りと愛しさとせめぎあってる葛藤が伝わってきて初めてアルマンに共感しました。「こじらせてる」のよね、このアルマン。あとは札束のお手紙に口づけして、嫌味たっぷりにマルグリットに渡すところもよかったな。

DVD録画のために急遽代役で組んだステファンがアニエスの引退公演まで務めるまでになったパートナーシップ、この目で見られて本当にありがたいことだと思いました。カーテンコールではアニエスへの感謝のバナーも出て、千秋楽のキラキラ紙吹雪もあり、さながらアデュー公演再び!という感じでした。前日のイザベルも引退したばかりで、カンパニーで来日するのは最後だったのだから何かお祝いしてあげればよかったのになあ…。残念。

追記
あーあと思い出した。アニエスのマルグリットでいいなと思ったところ。
パトロンである公爵に首飾りを投げるところ、しっかり目を見て毅然と投げ捨ててかっこよかった。オーレリは目をそらしてポトっと落としてて、たぶん後ろめたさを出してたのだと思うけど、それはちょっと弱いと感じたから。

アルマン父さんの願いを受け入れ別れを決心したあとのアルマンとのPDD、アルマンと顔を合わせてるときは精一杯の笑顔をつくって、顔を合わせてないときは嘆き悲しんでいるのだけど、その悲しみ押し殺して作った笑顔が本当に胸を打ちました。誓いをたてようとするアルマン(手をあげるマイム)の腕をさっと掴むところも「そんな先のことよりも、今はこうして抱きしめていて」と言葉が聞こえる。全編に渡ってアニエスは「役を生きてる」印象が強かった。

そう、それとプロローグのオークション会場で椅子に座って本読んでる紳士は、もしかして原作の語り手、アルマンの署名が入った「マノン・レスコー」を買った人なのかな?赤い装丁の本は回想シーンでアルマンも読んでいて、たぶん同じ本だと思うのだけど。すごく細かく考えて作られてるんだなあ。