パリ・オペラ座バレエ「椿姫」3/22昼@東京文化会館

★3/22 昼公演キャスト
マルグリット:オーレリ・デュポン、アルマン:エルヴェ・モロー
デュヴァル氏(アルマンの父):ミカエル・ドナール(ゲスト・エトワール)
マノン・レスコー:ローラ・エッケ、デ・グリュー:ヴァンサン・シャイエ
プリュダンス:サブリナ・マレム、ガストン:クリストフ・デュケンヌ、オランピア:レオノール・ボラック、公爵:ローラン・ノヴィ、N伯爵:シモン・ヴァラストロ、ナニーナ(マルグリットの侍女):クリスティーヌ・ペルツェー
マノンの求婚者:アレクシス・ルノー、ファビアン・レヴィヨン、ヤン・サイズ
マルグリットの求婚者:アルノー・ドレフェス、アントワーヌ・キルシェール、フランチェスコ・ヴァンタッジオ

初日キャストから微妙に変化バージョン。マノンがエケ、デ・グリューとガストンであるシャイエとデュケンヌが入れ替わった。

エヴさんがいなかったので、ようやく主役を見る事ができました(おい)。
正直ですね、わたしはオーレリの初日、上手い!上手いのはわかる!(…けど色彩がない…)と思ってしまい、どうにも感想が書けなかった。これまでパリオペのDVDで彼女のものを見るとすべて技術はあるけど色が無い踊りをしてると記憶してて、でもそれは本人もインタビューで「以前はサイボーグのように踊ってた」と言ってたので納得してたのです。今は違うんだな、という期待もあった。

音楽にぴたりと合って、非常に美しく硬質な完成度の高い踊りをしてるのですが、感情が伝わってこない。エルヴェ・モローの踊りも素晴らしいのに、二人のハーモニーで心が揺れない…。モヤモヤしながら3幕まで見ていて、舞踏会でアルマンがマルグリットを侮辱するシーンになってようやく、あ!これが彼女のマルグリットなのか!と合点しました。

というのは、アルマンにひどい扱われ方をしてもマルグリットはほとんど表情を変えない。そうされるのがごく当然、予想していた通りであったというような受け止め方をしており、大げさに言うならば「自分の犯した罪への報い」を受けてる。罪というのは好きな人を傷つけたこと、それと同じ代償を自分もこの身に受けなければならないとマルグリットは考えてる。

感情が伝わりにくいと思っていたことも、マルグリットはあくまでも高級娼婦で、感情をそのまま顔に出していい商売じゃない、本気の恋愛なんてしてはいけないという自制心の表れだったのかな、と。結局わたしはアルマンと同じ視点でマルグリットを見てたわけです。「きみは何を考えているんだ!?わからないよ!」という。

そう考えてしまったら、これまでの場面すべて遡って書き換えられていきました。最後、マルグリットが絶命する前に手を伸ばすところ、オーレリは自分の肩よりも少し高いところに手を差し出し、手のひらを丸くして輪郭を撫でた。それはまるでアルマンの頬を包むような仕草だった。孤独のなかでマルグリットが最期に見たものはアルマンだったと確信できる表情で、誤解されたまま愛する人と別れた彼女が、その最期の一瞬は幸せな幻影で満たされ逝ったのだと感じることができ、滂沱でした。

毎日見ても同じように感じることがない、というのが舞台の面白さであると改めて思った回でした。