パリ・オペラ座バレエ「椿姫」3/22夜@東京文化会館

★3/22 夜キャストは21日と同じイザベル&マチュー。
デュヴァル氏(アルマンの父):アンドレイ・クレム
マノン・レスコー:エヴ・グリンツテイン、デ・グリュー:クリストフ・デュケンヌ
プリュダンス:ヴァランティーヌ・コラサント、ガストン:ヴァンサン・シャイエ、オランピア:シャルロット・ランソン、公爵:ローラン・ノヴィ、N伯爵:アドリアン・ボデ、ナニーナ:クリスティーヌ・ペルツェー
マノンの求婚者:アレクシス・ルノー、ファビアン・レヴィヨン、ヤン・サイズ
マルグリットの求婚者:アルノー・ドレフェス、アントワーヌ・キルシェール、フランチェスコ・ヴァンタッジオ


この公演がイザベルの実質カンパニーと踊る最後でした。

バレエのマチソワするの初めてで、しかも観るほうの精神力を削っていく「椿姫」でやるってチャレンジをしてしまった(笑)でもさー最後だしさー。わたしは現地に行くほどバレエファンではないけど、日本に来てくれるなら通うのもやぶさかでない派なので。

エルヴェのしっかり計算された演技を見たすぐあとだと、「そのまんまでアルマン」と言えば好意的だけど正直に申し上げればノープランに見えるマチューのアルマンが気になった。手紙を受け取ったあとの「怒り」のダンスも迫力はなく、優しいだけのアルマン。イザベルが濃厚な女優ダンサーだから余計に熱量の差が目についてしまった。

リフトも、3人のなかで一番小柄で軽いイザベル相手なのに「よいしょ」て分かってしまうのがなあ…。ノイマイヤー作品の高難度リフトは「技」ではなく「言葉」なので、そこでもたつくと興ざめするのだ。って4回目ともなると厳しくなってしまっていけないなあ…。

気を取り直して脇役について書いておこう。
プリュダンス役コラサントは明るい踊りをする人。DonQではキトリを踊ったとのことで、似合うだろうなと思った。おどける演技などコミカルなところを上手く表現してた。一方サブリナ・マレムはエレガントな踊り。プリュダンスというにはインパクトが弱い気もしたけど、確かなテクニックで観ていて気持ちがよかったです。

コラサントと組んだガストンはヴァンサン・シャイエ、エケのマノンとデ・グリューも踊ってました。この日はデュケンヌと共にマチソワをこなしていて、DonQでの急遽代役といい、今回の来日公演では大活躍でしたが、サポートはいまいち。女性ダンサーが踊りにくそう、下手に見えてしまうという難点があり、惜しいところです。

その点、同じガストン役、デ・グリュー役を踊ったデュケンヌは確実できれいな踊りをするし、そして女性パートナーを引き立てることができる貴重なダンサーだと思いました。背が高いマレムとも難なく踊り、かつ魅力的なガストンを演じてました。派手さはなくとも、ご本人の聡い(賢い)感じが踊りに滲み出てて好きです。

オランピアのシャルロット・ランソンは昨年「天井桟敷」幕間でデズモデーナ踊ってました。ツンとした美人なのでオランピアに合ってます。レオノール・ボラックは童顔ファニーフェイスですが、目の動きなど演技がよくて、声が聞こえてきそうなマイムをしてました。

マノン役のエヴの演技が本当に素晴らしかった。視線の動かしかたが上手い!1幕すぐのアルマンとデ・グリューと3人で踊るところ、アルマンが走り去ろうとするのを「逃がさないわよ!」と追いかけてくる目、マルグリットと対峙したときのあざ笑うかのような目。鳥肌が立つというのはこういうときだ!と思ったのは2幕でアルマン父とマルグリットのシーンで、マルグリットの葛藤を具象化したマノンの振る舞いすべて。とくにマルグリットの腕を取り、羽交い絞めするところの表情にはぞっとするほどでした。だから沼地のシーン、命が零れ落ちそうなマノンとのギャップが激しくて、その落差にまた涙するという。よく考えて演じてる。エケはもちろん美しかったけれど、醜悪なドロドロさ加減はなくて物足りなかった。けれど、エヴさんがすごすぎたのかもしれない。