ミラノ・スカラ座「ロミオとジュリエット」@東京文化会館

ミラノ・スカラ座ロミオとジュリエット」を2公演見てきました。
1回目は20日(金)夜公演コジョカル(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)とフォーゲル(シュツットガルト・バレエ)、2回目は21日(土)昼公演オシポア(英国ロイヤル・バレエ)とコヴィエッロ(ミラノ・スカラ座)。
2回目は当初ジュリエット役もミラノ・スカラ座のダンサー(ペトラ・コンティ)のはずだったのだけど、来日できなくてオシポアさん昼夜ダブルヘッダー…す、すごい体力だ。

キャストなどNBSから引用

ロミオとジュリエット」全3幕
振付:ケネス・マクミラン、音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

9月20日(金)キャスト

ロミオ:フリーデマン・フォーゲル、ジュリエット:アリーナ・コジョカル
マキューシオ:アントニーノ・ステラ、ティボルト:ミック・ゼーニ、ベンヴォーリオ:クリスティアン・ファジェッティ、パリス:リッカルド・マッシミ、キャピュレット公:アレッサンドロ・グリッロ、キャピュレット夫人:サブリナ・ブラッツォ、大公:マシュー・エンディコット、モンタギュー公:ジュゼッペ・コンテ、モンタギュー夫人:セレーナ・コロンビ
ロザリンデ:ルアナ・サウッロ、乳母:デボラ・ジズモンディ、ロレンス修道僧:マシュー・エンディコット、マンドリン・ダンス(ソロ):フェデリコ・フレジ、3人の娼婦:ベアトリーチェ・カルボネ、エマヌエラ・モンタナーリ、アレッサンドラ・ヴァッサッロ


9月21日(土)キャスト
ロミオ:クラウディオ・コヴィエッロ、ジュリエット:ナターリヤ・オシポワ
マキューシオ:アントニーノ・ステラ、ティボルト:ミック・ゼーニ、ベンヴォーリオ:マルコ・アゴティーノ、パリス:リッカルド・マッシミ、キャピュレット公:アレッサンドロ・グリッロ、キャピュレット夫人:サブリナ・ブラッツォ、大公:マシュー・エンディコット、モンタギュー公:ジュゼッペ・コンテ、モンタギュー夫人:セレーナ・コロンビ
ロザリンデ:ルアナ・サウッロ、乳母:モニカ・ヴァリエッティ、ロレンス修道僧:マシュー・エンディコット、マンドリン・ダンス(ソロ):ヴァレリオ・ルナデイ、3人の娼婦:アントネッラ・アルバーノ、デボラ・ジズモンディ、ステファニア・バロッネ

演奏:東京シティ・フィルハーモニック・オーケストラ、指揮:デヴィッド・ガーフォース  


2公演の感想はなんといっても、アリーナ・コジョカルのジュリエットが素晴らしかった…!このジュリエットを見たらちょっと他の誰かで書き換えられることは難しいのではないか?と思うほど、お手本のようなジュリエット。さすがマクミラン作品のロイヤル出身ダンサーは違う…振付が「物語を語る言葉」として機能してるから、なんというか「踊ってますよ」て感じが一切しない。ジュリエットとして舞台に存在してる。

踊りの雄弁さに加えて細かい演技が素晴らしいのよ〜。初めて出会って恋に落ちたときの表情とか、ロミオから手にキスされたあと、その自分の手をとても大事そうに包んでキスするとかね、それって好きな人からキスされたことによって自分の体まで宝物みたいになるということでしょう?きゅんきゅんしますよ!

バルコニーのシーンはガラ公演で見たことがあるけれど、物語バレエの抜粋演技は本当に難しいんだなと思うくらいしか感慨がなかった(感情の高まりが伝わらない)。けど、この公演では、アリーナのジュリエットの無垢な愛にときめいて、号泣ですよ。あぁ刹那の幸せ…儚いけどジュリエットにとっては永遠なんだよな、この瞬間…。うわぁぁん…切ない苦しい。

もちろん最後のシーンなんて、カーテンコールで拍手ができないくらい泣いてた…。あぁ初めて「ロミオとジュリエット」見たんだなあ…て思った。DVDで見てたけど、ふーんて感じだったの…舞踏会のシーンの音楽はあんなにドラマチックなのに、なんであんなつまんない振付なんだろう?とか、マクミランはソードファイトが好きなのね?かっこいいよね、とかそんなことばっかり。純愛とか無縁ですのでね…。

相手役のフォーゲルについてはとくになんの印象もなくて、ただただコジョカル!!な公演だと思っていたけれど、翌日の公演を見たら「ああ、コジョカル劇場を成立させていたのはフォーゲルさんなんだわ…」とわかりました。相手役の魅力を最大に発揮させることも男性ダンサーの役割ですよね。かつ、バレエ特有のアホ王子(ジークフリードとかアルブレヒトとかそういうの)っぷりも存分にあったし。


と理解してしまうくらい、スカラ座若ロミオの不慣れな感じがこちらを不安にさせた2公演目(苦笑)いや、若手にチャンスを与えるの大事です。入団3年目、これがロミオ役デビュー。来日公演で役デビューってどういうことやねんて思わなくもないけど(それはフォーゲルもワシーリエフも同じ…)。

今回の来日公演は主役がゲストダンサーばかりで、スカラ座メンバーだけの日はこの1回しかなかったので観にいったのです。スターダンサーもいいけど、そのカンパニーらしさみたいなものをより感じることができるかなーと思って。結局はジュリエットもゲストダンサーになっちゃったけど。

オシポアが驚異の身体能力でカバーしてたと思うけど、それでもリフトなど不安定でなかなかたいへんそうだった。だから最大限に彼女の演技を発揮できてはなかったと思うけど、それを考慮してもちょっと惜しいと感じた。あれほど美しく踊れるのだから、もう少し演技力があれば最高に素晴らしいダンサーだと思うのに残念。というのも、最後の目覚めたあと、もうロミオが死んでるって知ってる動きなのよね…。そりゃ死んでるけど、物語のなかのあなたはまだ知らないはずでしょう?と。振付をこなしてるような感じ。「目覚ました、ロミオ死んでる、じゃあ私も死ぬわ!」て流れ作業で、そこに至るまでの感情の揺れがない(ロミオが持ってる毒瓶の残りを確かめることもしなかった!)。あっという間に胸に短剣刺しててびっくりした。今シーズンからロイヤルに移籍したとのことなので、演劇の本場イギリスで、細かい感情の表現バリエーションなど身につくと鬼に金棒じゃないかな。とバレエ素人のくせに不遜にも思いました。

コヴィエッロくんはがんばれ!もっともっとがんばれ!!


2公演ともにティボルトとマキューシオが同じダンサーだったのだけど、この二人の安定感。とくに2日目はいろいろ不安があったので、この二人が舞台にいるときだけ安心して見てた。死んだときにはどうしようかと思ったよ…(笑)ティボルト役のミック・ゼーニは丹精な顔立ちで、剣さばきもよく、格好良かった。死ぬときも渾身だったw

主役級の衣装はロイヤルのほうが重厚で豪華だけど、群舞の衣装などはミラノ・スカラ座のほうがラインが美しくて好き。舞台美術も豪華。

そして毎回思うことですが、オーケストラ…とくに金管の演奏技術の低さには閉口します。今まで思っててもあえて書かずにいたけれど、今回は本当に酷くて、わたしがダンサーだったら吉本新喜劇ばりにコケーとずっこけてますよ、と。音楽に気とられて踊りに集中できないとか悔しいし、ダンサーも踊りにくいだろうなと思う。