ディアナ・ヴィシニョーワ 華麗なる世界Aプロ

8/17・18の二日間、ディアナ・ヴィシニョーワのガラ公演に行ってきました。ロシアのマリインスキーバレエのトップダンサーであるディアナと、ABT(アメリカン・バレエ・シアター)、NYCB(ニューヨーク・シティ・バレエ)、ハンブルクバレエ、パリ・オペラ座という世界中から集まってくれたダンサーによる豪華なガラ公演でした。

オープニングとフィナーレはこの公演のためにABTのマルセロ・ゴメスが振付けた小品を全員で。これが意外と、と言うのも失礼だけど(プログラムに書いてあるわけじゃないから期待しようがなかったというのが正しい)素敵だった〜。オープニングはスポットライトの中心にディアナ、その光の中に次々と他のダンサーが入れ替わり、デュエットやトリオで踊るの。これから始まる公演にわくわくできた。フィナーレは各バレエ団のペアの個性が出るような振付だったと思う。


★「オテロ」振付:ジョン・ノイマイヤー、音楽:アルヴォ・ペルト
ハンブルクのエレーヌ・ブシェとティアゴ・ボァディンがデズモデーナとオテロを演じた。ピアノが3音ずつで展開してるところへヴァイオリンが長音で重なってる音楽。とても静かで抑制された動き。冒頭はシンクロ、中盤にデズモデーナがオテロの動きをなぞる、終盤にリフトなど二人で踊る。デズモデーナがオテロを理解しようと歩み寄ってふたりの距離が縮まるような印象を持った。デズモデーナがオテロの腰巻を外すところでスポットライトの色が青白いものから暖色の光になるのも、そういう印象を強めたのかも。

でも最後にオテロはデズモデーナの首に手をかけるので、理解しあうというよりは最期のシーンなのかと思ったら、検索して全幕の映像を見ると初夜なのかな?*1では首に手をかけるのは、二人の今後を暗示させる動きなのかな?
見る前は「いちばん眠くなりそうな作品」になりそうで注意しなければ…と思っていたのだけど(笑)、とても美しくて、動きに見とれた。音楽もシンプルで美しい。好き。


★「コッペリア」振付:ミハイル・バリシニコフ 音楽:レオ・ドリーブ
パリ・オペラ座メラニー・ユレルとマチアス・エイマン。マチアスは怪我で長く舞台に立てない期間があったということで、久しぶりの来日だったのかしら?でもそんなことを微塵も感じさせない軽快さでした。ユレルとともに2日目のほうが調子が良さそうだった。可愛らしいペアだった〜。パリオペのスワルニダの衣装はかわいい!ショッキングピンクのリボン〜。


★「失われた時を求めて」より "モレルとサン・ルー" 振付:ローラン・プティ 音楽:ガブリエル・フォーレ
ABTのマルセロ・ゴメスとデヴィッド・ホールバーグ。鏡面の動きなどはまさに陰と陽、表と裏って感じで対照的な個性を放ってました。かっこよかったなあ。


★「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」振付:ジョージ・バランシン 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
NYCBのアシュレイ・ボーダーとホアキン・デ・ルース。アシュレイが溌剌としたリズムの取り方、踊り方で、はっとさせられた。すごくチャーミング。ホアキンも飛びながらピルエットして超絶技巧で場内を沸かせていました。たぶん第一部でいちばん拍手が大きかった。


★「ダイアローグ」振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:フェデリコ・モンポウ(「ショパンの主題による変奏曲」) ピアノ演奏:アレクセイ・ゴリボル
休憩挟んで、ディアナとティアゴ。この作品だけピアノ演奏つき。ディアナのためにノイマイヤーが振付けた作品。日本で初演だったそうです。それもあり、別件のお仕事で来日中だったノイマイヤーがカーテンコールに登場しました。わあ!わたしの敬愛する先生が〜まさかこんな早くお目にかかれるとは〜!とテンションあがりました。

振りだけ見てると気分屋の男にその場その場で振り回される女というかね…「DV男と共依存の女」みたいなストーリーに思えてしまうのだけど(笑)、でもディアナがとても強い女のオーラが出てるので、男の言いなりになんかならないぜ!ってちょっと痛快だったりもする。丁々発止のやりとり。おもしろかったな〜。ディアナじゃないと悲壮感出そうかも。


第三部の最初の演目は、予定ではアシュレイとホアキンの「ドン・キホーテ」だったのだけど、第一部のチャイコフスキー・パドドゥでホアキンの膝の調子が悪化したということで、急遽アシュレイのソロに変更されました。初日でそのアナウンスだったので、とても心配したし、明日はどうなるの??と思いましたが、二日目のチャイコは踊ったので、大事をとってドンキを踊らない決断をしたんだと思います。うんうん、長く踊り続けるためには無理は禁物でしょうしね。


★「フーケアーズ」振付:ジョージ・バランシン 音楽:ジョージ・ガーシュイン
というわけでアシュレイのソロはバランシン。動きにメリハリがあり、腰や手先の動かし方がスウィングしてる。ガーシュインの音楽がそのまま動きになってるみたいで楽しかった!10月のNYCB来日公演、実はバランシンはとっつきにくい印象があって、あまり興味がなかったのだけど、ああ…こういうことなのかな〜?とちょっと面白さを掴めたかも。


★「マンフレッド」振付:ルドルフ・ヌレエフ 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
さきほどの「コッペリア」のキラキラ明度のマチアスから一変して、重厚な雰囲気。マチアスが物語バレエ全幕で濃厚に演技してるの観たいな〜と思った。


★「ジュエルズ」より "ダイヤモンド" 振付:ジョージ・バランシン 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
エレーヌ・ブシェとデヴィッド・ホールバーグ。わたしにとってジュエルズってよくわからない演目なのよね…そうバランシン…わからないのよ…ていつも躓く。しかし二人とも体が美しくて、愛でる楽しみはあるのだけど。バランシンについて要勉強って感じだ。


★「オネーギン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ 振付:ジョン・クランコ 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
ディアナとゴメス。物語バレエの抜粋て難しそうだなあと思った。わたしは「オネーギン」全幕を知らないし、手紙のPDDを先々週の「世界バレエフェス上映会」でマリア・アイシュバルトとマニュエル・ルグリのでしか見たことない。で、同じ手紙のPDDだったのに、それとディアナのとは全然違うものに見えた。ディアナは最後に泣き崩れたりしない決然としてる、やはり強い女なのだね。こういうダンサーの個性によって解釈や表現が変わるのがとても面白い。


つらつらと書いたけど、でも実際には自分の見識不足で受け取れてないことがたくさんあるんだろうなあと思った。悲しいけれど、バレエ観るたびに「無知だな」と思います…。そして目の解像度が低いのよ…同じ「絵」を見ても詳細なところに気づけてないというかね。一度見ただけでは意図が酌めないというのか。もどかしい!今回は2日間行けてよかったです。