遺体

遺体―震災、津波の果てに

遺体―震災、津波の果てに

「一年」になる前に読んでおこうと決めていた本。
あの日約2万人の人が一瞬にして消えてしまった。そのあと残された地獄のような光景を前にして、自らも被災または近しい人が犠牲になったにも関わらず、震災直後から人のために尽力された方々がいることを記憶にとどめておく。

岩手県釜石市、町の半分の高台は被災を免れたために、同じ市内に暮す人たちが隣人の遺体を発見し、安置所へ運び、検案し、保管し、見送らざるをえなかった。医師や警察官などの「人の死」に対して職業上なんらかの訓練や経験をしているのではない「ふつう」の人たちが、夥しい数の死をどう受け止めたのか。亡くなった人へ、遺された人へどんな言葉をかけたのか。

安置所の世話役をかってでた民生委員の方、遺体捜索をした消防団員、市職員、自衛隊員、海上保安官、遺体の検案をした医師と歯科医、犠牲者を見送った僧侶など…それぞれの証言をもとに、その人たちの目線を通して複合的に構成されている。

あの頃わたしが都会で耳にしていた「絆」や「がんばろう日本」や「復興」なんて言葉は、ほんとうに薄っぺらく、惨状を目の前にしたら何の意味もなさないものだったろう。利他って言葉を、行動を考えたい。