上原ひろみ&アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス@東京国際フォーラム

4月のソロライブ以来のひろみ〜!そして今年最後(予定)の音楽ライブ!

前回のライブは大震災のあとの初めてのライブだった。そして震災後初めてひとりで街灯の少ない夜の外出をしたライブだった。海外ミュージシャンが続々と来日をキャンセルしていたさなか、ひろみが2週間以上も穴埋めライブしてくれたやつです。「自分に出来ることは何か?」を考えて、音楽を愛する場所を守るために行動してくれたひろみでライブ納め!今年一年を象徴するかのようだよ。

わたしの席の周囲がそうだっただけなのか、全体もそういう傾向だったのか知らないが、いつもより年齢層高め。周囲が「お一人様」のオジサマだらけで、客入りのSEもツェッペリンだし、若干のおっちゃんホイホイを感じつつ時を待つ。

メンバー登場してすぐひろみがマイクを持ち「こんにちはー!上原ひろみです!!」と元気いっぱいに挨拶。「今回のツアーで日本に来るのを楽しみにしてました。日本は心配りのよく行き届いた国で、ほんとにいいところだなあと思う。会場に楽器がない、届かないとか海外ではあることだけど、日本ではぜったいにそんなことない。楽屋にもお菓子がたくさんあってね、ほんとに夢の国みたいなんですよ〜。食べ過ぎちゃうなあと思いながらも、ライブで発散すればいいか!とぱくぱく食べました」とそれはそれは嬉しそうに語る。さらに、ヨーロッパツアーでは5カ国を5日間で回るハードスケジュールをこなしたこと、ひろみがお辞儀をして挨拶するものだから、アンソニーやサイモンも同じようにお辞儀するようになったこと、こうして日本の文化をじわじわと浸透させようとしています!などなど、珍しくたくさんしゃべってた印象。

しかし演奏になれば豹変。

「Voice」の一音目から心奪われる。こんなに力強い始まりだったか?と思う間もなく激流に放り出される。宇宙が膨張しつづけているように、音の物語がどんどん増幅して、あっいま体が音に飲み込まれた、とはっきり自覚する。経験したこともない感覚だった。始まりと同じフレーズで曲が終わったとき、このライブが生涯で忘れられないものになる、違う場所にわたしを着地させる、と思った。この1曲だけで今日の演奏は終わりです、と言われても幸せな気持ちで帰ったと思う。

それから先は特大のおまけを貰う気持ち。おまけだけど、圧巻!アルバム『Voice』は一番好きな作品で、それが目の前で演奏されてるだけでも感激なんだけど、即興演奏部分がもう血が巡る!サイモン・フィリップスが想像以上に驚異的な超絶技巧で、あんなに繊細なシンバル聴いたことないわーとか、バスドラどうなってるのーとか、ドラムソロのたびに叫びたい気持ちに(笑)「Flashback」なんて音源もすごいのに、さらに速くなってるし!「Labyrinth」「ピアノソナタ悲愴」のベースもよかったなあ。

普段のわたしはどちらかと言えば言葉にとらわれているほうで、同じ感情を伝えるのにもどの言葉を選択するか、また相手はどういう言葉を選ぶ人なのかを重視している。「ものは言いよう」という考えに心底同意するし、言い方次第で結果はまったく異なると思うし、実際、言葉の選択を自覚的におこなうことよって、ずいぶんと助けられてると思っている。だから、わたしの感情を動かすものは言葉や人の声に頼っていることのほうが多い。

けれど、ひろみはピアノだけでそれをやってのける。ピアノの音にすべてがある。この音が発せられるまでに彼女のなかにどれだけの経験、生活が積み重なって、この一音なんだろうかと想像する。

ひろみは「ライブは生活と同じ。繰り返しがない。一回性のもの。そして、この場所にあるものすべてが音楽になる。生きていてよかったと思える、そういう感情を与えてくれる」と言った。刹那的だけれど、だからこその衝動や煌きがはじける。音に伝わる。ひろみを見るたび「有難い」=存在しがたいもの、という気持ちになってしまう。

今夜はそれが最強に増幅してたなあ。世界中で演奏をしているから、わたしのような気持ちになる人が行った場所のぶんだけ居るんだなと想像したら、ぞわぞわした。音楽を奏でる人を大切にしようと、いつにも増して強く思った。

そして最後に素晴らしい光景を見ることができた。アンコールが終わって、客電がついたにもかかわらず、会場の興奮は醒めることなく拍手が鳴り止まなかった。帰る人もそれなりにいたけれど、ほとんどがスタンディングオベーションのまま動こうとしない。3分、5分くらい経った頃だろうか、メンバーが登場して「Joy」を演奏。残っていた客は前方の席へ詰めより、ライブハウスのような状態に。あぁ、この人たちと、今夜の素晴らしいライブを創り上げることができたんだ、とどうしようもなく涙がでた。

以下うろおぼえ

  • Voice
  • Now or Never
  • Labyrinth
  • Temptation
  • Desire
  • Delusion
  • Flashback
  • Beethoven's Piano sonata No.8,Pathetique
  • Haze
  • Dancando No Paraiso

アンコール

  • (失念)
  • Joy