笑福亭鶴瓶×上原ひろみ@恵比寿ガーデンホール

昨日は関東では珍しく雪が降った。コンサートを終えて会場を出ると真っ白の世界。夢がまだ醒めてないのかなと思いながら帰ってきた。

上原ひろみスタンリー・クラークのアルバムでグラミー賞を受賞した当日に、しかもジャンルの違う鶴瓶さんと共演するという一風変わったコンサートを見られたというのは、めぐり合わせというか幸運なことだと思った。今朝のワイドショーでも鶴瓶さんがコンサートでひろみにお祝いをのべてるシーンが取り上げられてて、不思議な気持ち。とくダネでは生演奏もあった。出勤前に気分もあがる。

まずこの共演が叶ったのは、もともと上原ひろみが落語好きで昨年4月の鶴瓶さんの独演会を聞きにいって初対面を果たし、そのあと雑誌SWITCHの対談で再会、ひろみのほうから「一緒にやりませんか?」と声をかけたらしい。鶴瓶さんはそれまで上原ひろみの名前さえ知らず、どんな演奏家なのかも知らなかったと。落語仲間に訊いたら口々に「すごい人ですよ!」と言われ、12月にやっと来日公演を観にいったら度肝抜かれてしまったらしい。

第1部は鶴瓶さんの出囃子・新喇叭をひろみがジャズアレンジしての演奏。そのあと鶴瓶さんが「死神」をかけた。おぉー3度目だよ、鶴瓶さんの死神聞くの。忙しいながらも落語会をかなりの数こなしている鶴瓶さん、けっこういろんな噺をかけてるはずだし、わたしなんか落語聞くのたったの4度目なのに、そのうち3度も鶴瓶さんの死神を聞いてるということは、ここぞというときの噺なのかもしれない。圓朝の元ネタを大胆にアレンジしているため、死神をかけるときはお詫びの意味も込めて必ず全生庵にお墓参りするそうだから、やはり思い入れが強い噺なのかな。元のドラマチックなサゲを、鶴瓶さんは男のどーしようーもなさ、情けなさに愛を込めてロウソクが消える意味を与える。

第2部は鶴瓶噺として、妻・玲子さんとの馴れ初めトークにひろみがピアノで応える。ジャズピアニストらしく先を読み、流れを作り出す力を如何なく発揮して、見事に鶴瓶さんの話に効果的な音楽を添えていた。ひろみの『主よ、人の望みの喜びよ』が聴けるとは思わなくて、妙に感動した。そして鶴瓶噺の奥さまとの純愛・熱愛エピソードはこれまでにもテレビなどで何度も聞いてるんだけど、落語といっしょで何度聞いても笑えて泣けてしまう。2/14は鶴瓶さんが弟子入りした記念日だそうで、奥さんとほぼ駆け落ちのように一緒になり「この人を守っていかなきゃならない。芸で食べさせていかなきゃならない」と決意しての入門だったそう。必死に働いて、1年で6本のレギュラー番組を持った。「独りでいることも大切なことだけど、でも誰か、この人のために頑張るんだ!という気持ちは本当に大事。若いもんに“早よ結婚せえよ”と言うのはそういう気持ちがあったから」と。

ひろみの演奏を聴いたのは2度目。前回は3ピース、今回はソロだったが、どっちもいいなあ。ピアノの音、一音一音がこんなに美しい響きのあるものだと体感を伴って知ることができた。超絶技巧が取り上げられがちだけど、あんなに手数が多くても、その一音に無駄はなく、大切に音を奏でてる。来月出るアルバムは買おうかな!

ヴォイス(初回限定盤)(DVD付)

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