武満徹トリビュート 〜映画音楽を中心に〜@Bunkamuraオーチャードホール

武満徹の名前だけは知っていた。NHKで放送されてる『あの人に会いたい』という10分間番組でチラっと観たことがある。あとその番組が本になったのにも掲載されてたし、そのあとどこかで武満の文章を読んだことがある。けれど、武満徹がどんな音楽を創っていたか、わたしはまったく知らない。さらにわたしは映画もたまにしか観ないし、昔の映画などまったく知らない。黒澤明はさすがに名前を知ってるけど、ちゃんと観たことない。それなのにトリビュートコンサートのチケットをすばやく購入。なぜなら大友良英さんの演奏を観てみたかったから。

20世紀を代表する世界的作曲家、武満徹(たけみつとおる 1930−1996)の生誕80年にあたる本年、主としてその映画音楽作品が演奏されるコンサート。武満は現代音楽作曲家として「弦楽のためのレクイエム」「ノヴェンバー・ステップス」をはじめとして多くの作品を残した。一方、「夢千代日記」「波の盆」などテレビドラマでの素晴らしい音楽を記憶されている方も多くいるだろう。また大の映画好きとして知られ、映画音楽作品を実に数多く残した。今回はジャズの菊地成孔とフリーミュージックの大友良英がそれぞれの視点から武満の映画音楽を中心にスポットをあて、オマージュを捧げる。I 部では映画音楽作品を、II 部では映画音楽以外の楽曲なども演奏される。


I 部:大友良英プロジェクト

 曲目 
どですかでん」、「燃えつきた地図」、「乾いた花」、うた「○と△の歌」・「翼」、「怪談」より「耳無し芳一の話」

 出演 
田中泯(ダンス)、熊谷和徳(タップダンス)、浜田真理子(ヴォーカル、ピアノ)、カヒミ・カリィ(ナレーション)、西原鶴真(薩摩琵琶)、江藤直子(ピアノ、チェンバロ、ストリング編曲)、ジム・オルーク(プリペアドピアノ、エレクトロニクス)、パイティティ(ウクレレ)、高田漣(スチール・ギター)、近藤達郎(ハーモニカ、バス・クラリネット)、Sachiko M(サインウェイヴ)、石川高(笙)、高良久美子(パーカッション)、芳垣安洋(パーカッション)、飴屋法水(物音)、大友良英(ギター、ターンテーブル、編曲、指揮)


II 部:菊地成孔プロジェクト

 曲目
武満徹作品より>  映画のための「L.A., New York, Paris, Rome, Helsinki」(編曲 中島ノブユキ)、映画「他人の顔」より“ワルツ”(編曲 中島ノブユキ)、2つのバンドネオンとテープ音楽のための「クロス・トーク」、ピアニストのためのコロナ、ソング「めぐり逢い」
武満徹著作『夢の引用』より> 映画「アルファヴィル」より"Valse Triste"(編曲 中島ノブユキ)、映画「8 1/2」より"E Poi(Valzer)"(編曲 中島ノブユキ)
<コレクティヴインプロビゼーション>  “武満トーン wtih マンボ”、「怪談」へのオマージュ
菊地成孔作品から>  “京マチ子の夜”(作曲 菊地成孔/編曲 中島ノブユキ

 出演 
中島ノブユキ(ピアノ/編曲)、川波幸恵バンドネオン)、林正樹(ピアノ)、鳥越啓介(ベース)、早川純(バンドネオン)、吉田翔平(ヴァイオリン)、楢村海香(ヴァイオリン)、菊地幹代(ヴィオラ)、徳澤青弦(チェロ)、堀米綾(ハープ)、大儀見元(パーカッション)、田中倫明(パーカッション)、菊地成孔(指揮、サックス、ヴォーカル、CDJほか)


キャストがとにかく豪華。たった1曲のためだけに熊谷和徳やら田中泯が出てくるんだぜ!浜田真理子はアンコール含めてたった3曲のために島根から来てるんだぜ!*1あとはプリペアドピアノや琵琶など初めて生演奏を聴いた楽器もあったり、「物音」があったり。
タップダンスなんて芸能人の“かくし芸大会”でしか見たことなかったから、タップダンスの何がすごいんだか全然理解してなかったんだけど、熊谷和徳のを見たら謝りたくなった。というか“かくし芸”で披露した芸能人よ、すべてのタップダンサーに謝れ!と思った。生身の体なのに打楽器。ここまで細かいリズムが刻めるのか!観ていて血が体中をめぐる、熱くなる。泯さんの踊りも、そこだけ時空が違うように見えた。速くなったり、ゆるやかになったり。

1曲やる前に解説をして終わるごとに演奏者の紹介をするような流れで、そのドタバタな進行ぶりを大友さんは「新宿ピットインみたいな進行で申し訳ない」と言ってて笑ってしまったけど、たしかにしゃべりすぎて終了時間が押したようだ。大友さんがとても楽しそうに演奏してたのが印象的。『乾いた花』では楽しすぎて予定より長く演奏したようだし、“『怪談』を一晩中やってていいと言われたら迷わずやる”とも。初めて生の大友さんを拝見したけれど、思ったよりもずっとかわいらしい方だった。音楽大好き!という気持ちが溢れてて、見てるだけでこっちもニマニマするような。
第2部の菊地成孔さんも初めて拝見したが、あんなにチャラい話し方をする人とは思わなかった…47歳とか嘘だろ。演奏はもちろん素晴らしかったですけども!ひさしぶりにサックスの音を聴いて、あぁ木管楽器いい…懐かしい…とうっとりしましたけども。図形楽譜の演奏も初めて聴くことができて、面白かったけれども。アンコールで浜田真理子が登場したのに菊地成孔が歌いだしたので「お前が歌うんか!」と心の中でつっこみを入れてしまった。かなり「出好き」な方なのか。浜田ファンとしてはフルで聴きたかったんだけど。
でも全編楽しかったからいい。武満徹への知識がなくても(わたしはまったく予習なしで行ったけど)心から楽しめた!本当に面白かった!久しぶりにまったく知らない世界を覗き込むことができて、そういうときのワクワク感がたまらない。体のすみずみまで血が届いた。

*1:今ツアー中だから、わりかし近くにいたのかもしれないが