損したくない人

仕事帰り人身事故に遭遇した。とはいっても現場に立ち会ってしまったわけではなく、前の駅との間で…とのアナウンスが入った。さらに案内は振替輸送をすると続ける。しかし自宅の最寄り駅にはその路線しか乗り入れてないし、バスの停車駅もない。運転再開するまで駅ビルのお店をふらふらして待つか、すぐにタクシーで帰るにしてもとりあえず改札を出ようと階段をのぼると、窓口には振替チケットを貰う人の長い列。それを横目に改札を抜けようとするときに聞こえてきた言葉に驚いた。
駅員に詰め寄り「誠意を見せろって言ってるの!」と声を荒げる中年男性。どうやらわたしと同じ状況らしく、振替輸送ではなくタクシーチケットを出せということらしい。駅員は平身低頭、でも毅然と、鉄道の振替しかできないと応対していた。男性の身なりはいたって普通。たぶん家に帰ればいいお父さんです、と言われても不思議はないという感じ。それなのに「誠意見せろ」だなんて、ゆすりたかりまがいのセリフが出てくる。
なぜそんなに、少しも損をしたくないんだろう。いいじゃんか、ちょっとくらい待ってたって。1時間後には何事もなかったように、すこしの感傷も挟む余地なく迅速に運転再開してるよ。いいじゃんか、ちょっとくらいお金出してタクシー乗ったって。居酒屋で一杯、くらいの金額で帰れるんじゃないの?なんなんだよ誠意って。バカヤローお前こそ誠意見せろ。