読了

切羽へ (新潮文庫)腰痛探検家 (集英社文庫)
「腰痛探検家」とは「腰痛持ちの探検家」なのか「腰痛世界を探検している人」のか。たぶんどっちも。高野さんはなぜこんなにも変な人を呼び寄せてしまう磁場を持っているのか…いつもの未知動物探してるときなら外国だし文化違うしとか思うけど、日本で腰痛の治療してるだけなのに次から次へと出会う妙な人たちが面白すぎる。今回は奥さまもたくさん登場されて(愛犬ダルマも)、探検ものとは違うほのぼの感。腰痛な人も、そうでない人も面白く読めると思います。
荒野さんはオムニバス作品『女ともだち』で短編を初めて読んで興味を持ち、そのあとすぐに古本屋で『ベーコン』『誰よりも美しい妻』を購入して読んだ。『ベーコン』は食べ物が大切な要素となっている短編集で、表題作のベーコン(人里離れた山の上で男が独りで作ってる)をいまでも猛烈に食べたくなる。『誰よりも美しい妻』も妻が拵える食べ物が美味しそうなんだ。『切羽へ』の妻もそうだけど、なぜか主人公は無色透明な印象。周囲の人は誰も彼も濃いのに。その色を反射して主人公の輪郭が浮かび上がる感じ。解説で山田詠美が「井上荒野さんは、書いた言葉によって、書かない部分をより豊穣な言葉で埋め尽くす才能に長けた人」とあって、ああそうなのかと納得してみたり。