鋭角的純音楽@代官山・晴れたら空に豆まいて

ステージにはグランドピアノがどーん。客席は小上がりの畳席も含めて100席くらい。こんな小さい箱で、でもピアノがちゃんとあって、あぁ密度が濃いな〜と始まる前からかなり盛り上がってくる。タテタカコさん、小谷美紗子さん、遠藤賢司さんの順番で演奏された。
タテさん、フライヤーの写真しか見たことがなく、どんな声かも歌かも知らず、そのわりに勝手に「ギターの人」なんだと決め付けていたら、「ピアノの人」だった。そして歌いだしてから「南国の人」かなと思ったら「長野の人」だった。どうなの、私の勘の悪さ。そんなことよりも、タテさん。すごい声だったー!とてもきれいな声なのに力強くて、びっくりした。
そしてMCが不思議な面白さだった。そのあとの小谷さんが、自分がMCが苦手なものだから「タカコちゃんもMCが苦手だろうと思ってたら、とても流暢…。笑いまでとってて、やべーなと思いました。私を超える『すきまだらけのMC』はやはりないのか…」とやや落ち込んでいた(笑)

タテさんのMCで印象に残った話、最近カンボジアに行ってきたそうで、それはカンボジアの学校には音楽の授業がないので、授業をしてみませんかとお誘いを受けたらしい。人に教えることは何もないけど、歌を一緒に歌うくらいは、と思って行ったそうだが、子どもたちだけでなく大人も「音楽を聴く」ということさえほとんど経験がなく、「歌を歌いましょう」と言ってもはじめは「ぽかーん」だったと。生まれたときから当然のように音楽とともに暮らしてきたタテさんにとって、とてもじゃないが言葉には表せないくらいの衝撃的な出来事だったらしい。10校ほど回って歩いたそうで、そこの子どもたちにとってもタテさんの歌声は人生を変えるくらいの衝撃になったんではないかと想像する。音楽の持つ力を、私はそれくらい大きなことだと信じている。

小谷さんは前半ちょっと調子がでてない感じがしたけど、後半はどこまでもいけるような伸びのある声で「儚い紫陽花」「音」「手紙」。あとは「音」、私が聴いた今までのなかで一番よかったなー「音」のオリジナルはeastern youthと一緒に演奏しているもので、私はこの曲がほんとにほんとに好きなんだけど(イントロの吉野さんのギターで一気にあがる!)そういう曲をピアノ一台の弾き語りでやっても格好よくできてしまうのが小谷さんの度量だわ。小谷さんライブは、9月の渋谷でのイベントまでしばしおあずけ。セットリストは「生けどりの花」「Gnu」「眠りのうた」「STAY」「儚い紫陽花」「音」「手紙」

初めての生エンケンは、さすがの格好良さだった。これで62歳…。今年はデビュー40周年ということでいろいろイベントがあるそうだ。9月に発売されるアルバムのジャケットが荒井良二さんの絵で、できたてのを見せてくれた。とても可愛い絵。そして今度公開される「20世紀少年」にも出演しているらしい。浦沢直樹エンケンファンだそうで、ぜひにとなった、映画オリジナルキャストだと。「映画が公開されているあいだは僕は『歌う映画スター』ですからね」なんて冗談をまじえつつ、タテさん小谷さん女性ふたりのミュージシャンをして「やはり女の子には勝てないと思うね、まっすぐ歌うでしょ。自分だってずいぶん真面目に音楽をやってきてるけど、たまにああいうのを観るとはっとするんだよね」ということを言っていた。ステージに出る前、タテさんは楽屋の神棚におまいりしていたこと、小谷さんはマネージャーらしき男性スタッフから「たまには緊張しなよ」と言われていたことも暴露していた。

22時近くになり、明日のことも考えて途中で退場。残念。でも初めての方の歌声を聴くことができて、収穫はとっても大きい日だった。CD音源もいいけど、やはりライブ!人の歌声はライブに限るよ。目の前にいる人が、体ひとつでこんなに音を響かせることができるんだ!というの観るたびに驚いてしまうし、そのときを共有できたことがなんという幸運だろうか!と思う。