ナショナルシアターライブ『フランケンシュタイン』

イギリスで上演された作品が映画館で見られるNTLive企画で、ダニー・ボイルが監督・演出し、ジョニー・リー・ミラーベネディクト・カンバーバッチがW主演した「フランケンシュタインFrankenstein」(2011年上演)を見てきました。

2/14・15・16はジョニーがクリーチャー役、ベネディクトがフランケンシュタイン。2/21・22・23はベネディクトがクリーチャー役、ジョニーがフランケンシュタインとキャストが入れ替わったバージョンが上映されます。

フランケンシュタイン」というと…顔に縫い傷があって、首にボルト刺さってて、ふんがーふんがーな怪物しか思い浮かばない(ボリス・カーロフと「怪物くん」の弊害・笑)のでなんとなくホラー物、コメディという認識をしていたのと、ロバート・デ・ニーロ(怪物)とケネス・ブラナー(博士)の映画は学生の頃見ましたがほとんど覚えてなくて、なんで今更フランケンシュタイン…?面白いわけ…??と疑いながら映画館へ行ったのですが、これが!想像以上に面白かった!昨日見てきたジョニークリーチャーがまさに怪演で、こんなに切ない物語だったのか…と認識を新たにしました。

わたしは初めてのモノに触れるときの喜びや、刹那の幸せの描写に滅法弱いので、目覚めたてのクリーチャーが身体のすみずみまで感覚を確かめ、運動機能を繋げていく表現や、初めての朝に昇る太陽のあたたかを感じ、鳥が飛び立つ音に驚き、雨に打たれ、草の匂いをかぎ、風のくすぐったさに笑う、そういう自然のひとつひとつをみずみずしい感受性で掴んでいく様子に滂沱でした。かなりの時間を割いてこの場面を見せることにより、彼がただの「怪物」ではないことを分からせ、親近感や愛着を持てるようになってる。

シンプルに見えて大掛かりの舞台セットがまた素晴らしい。こんなハコがあるイギリスが本当に羨ましい…と心底嫉妬。それと今回の上映版カメラワークは映画監督らしい視点がたくさんあり、まるで生で映画を撮影してるのをそのまま観ているような気持ちになり、それも興奮しました。舞台を実際に見た人や、舞台演劇好きな方からは視点の移動や引きの目線が少ないことによる弊害(バストショットで映らない部分での演技が切り捨てられてる)も指摘されてましたが、わたしはそこまで気になりませんでした。

今週末のキャスト入れ替えバージョンも見にいこうと思います。ベネディクトの博士はある意味シャーロックであり、とても分かりやすい分、その彼がクリーチャー役をどう演じるのか興味があります。

原作は1818年に20歳そこそこの女性が執筆したというのもまた興味深いです。種の起源生命倫理、科学の追求、人間の権利(自然権)など今でも尽きないテーマが盛り込まれているからこそ、こうして200年経とうとする今でも表現者を刺激するんだろうなあ。原作も読んでみたいです。

フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))

フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

それと今回の「フランケンシュタイン」の脚本(英語のみ)も販売されてます。

Frankenstein (Faber Drama)

Frankenstein (Faber Drama)


★追記
ベネディクトクリーチャー、ジョニー博士バージョン見てきました。正直、先週の衝撃を越えることはなかった。ジョニークリーチャーの声と動き、表情が脳内に焼きついてて、ベネクリーチャーは最後までそれを塗り替えられなかった。これは刷り込み(初めに見たものを親だと思う)みたいなものなのか?
いや、ジョニーの演技がやはり強烈だよ。言葉の切実さがより強かった。ベネディクトさんは上品で、演技の型のようなものを感じてしまう。
あと前回バージョンよりも上からの画が多すぎて、ちょっとそれがうるさかった。どうやら再上映が決まったそうなので(A:3月28日(金)〜30日(日)、B:4月4日(金)〜6日(日))*1、そうしたらジョニーのクリーチャーをまた見たい。

中途半端だけどメイキング映像。

ナショナル・シアター・ライブ2014 今後のラインナップ(http://dramanavi.net/staff/2014/02/022783.phpより)