シルヴィ・ギエム&アクラム・カーン・カンパニー 「聖なる怪物たち」@ゆうぽーと

芸術監督・振付:アクラム・カーン
ダンサー:シルヴィ・ギエム、アクラム・カーン
振付(ギエムのソロ):林懐民、振付(カーンのソロ):ガウリ・シャルマ・トリパティ
音楽:フィリップ・シェパードおよびイヴァ・ビトヴァー、ナンド・アクアヴィヴァ、トニー・カサロンガの歌より

照明:ミッキ・クントゥ、装置:針生康、衣裳:伊藤景、構成:ギィ・クールズ
演奏:アリーズ・スルイター(ヴァイオリン)、ラウラ・アンスティ(チェロ)、コールド・リンケ(パーカッション)、ファヘーム・マザール(ヴォーカル)、ジュリエット・ファン・ペテゲム(ヴォーカル)

シルヴィ・ギエムはフランス出身、アクラム・カーンはバングラディシュ系イギリス人、ガウリ・シャルマ・トリパティはインド出身、林懐民は台湾、ミュージシャンはそれぞれベルギー、ドイツ、パキスタン、オーストラリアから、舞台空間は日本出身の二人、照明はフィンランド…と多様な人種が関わっている作品。

和紙のような質感の真っ白い舞台装置がアフガニスタンの切り立った岩山みたい。そこにインド〜中東の特徴をもつ民族調の音楽と歌、インド舞踊や太極拳の動き、フラメンコのサパディアードのようなリズムで床を打ち鳴らしたり、その合間にはギエムとカーンのふたりの独白と対話。

二人での踊りも対決と融合を繰り返して、ときに暴力的だったり、一体化したり。身体の動きも多様だけど、その動きから想起される感情も多面、多彩で、筋書きがないようなライブ感があった。

わたしは民族音楽が好きなので、音楽だけでも楽しめたところに、二人の身体から、動きから放出されるエネルギー、そしてアドリブで日本語を話したりして、心から楽しそうに踊り、演じてて、ユーモアのある会話に笑っちゃったりして、すっごく楽しかった。改めてギエムって可愛い人だなと思った。

こういうの見ると、ギエムがクラシックバレエを踊ってたことがあるって全くイメージつかない。確かに動きの基礎になるところ、土台にしっかり古典があるからこその踊りなんだと思うけれど。

そしてギエムは英語・フランス語・イタリア語・日本語でしゃべってた。「わっかりましたー」のイントネーションが可愛かった。「ここ水が多いです、危ないです」と言いながら舞台に落ちた汗をタオルで拭いてた(足でw)アクラムの日本語はあまり聞き取れなかったけど、「わたしが日本にきたのは○○のためです」みたいな、入国のときに伝える言葉っぽかった(笑)それって暗記…w

そうそう、一番記憶に残ったことは、いつまでも感激する心(Émerveillé エマーヴェイユ)のことを説明するときギエムが「今の季節ならクリスマスツリーを見上げる子供の気持ちよ!」って言うのに対して、アクラムが「ぼくはムスリムだから、それわかんない」って返すのが可笑しかった。多人種が関わる作品だからこその返しだなって思った。なんというか、これ日本人の感覚なら簡単に「そうそう!そうね」って納得しそうだけど、わたしは「それわかんない」って言えることのほうが好きだな、と。