読了

10歳の放浪記 (講談社文庫)

10歳の放浪記 (講談社文庫)

昭和30年代の話なのに、なぜかいま現在の話に思えてしまう。むしろいまのほうがより「自己責任」だのという言葉で切り捨てられ、周囲の目は厳しく、行き場がなさそうだ。大人の事情にふりまわされる子どもたちが今日も犠牲になっているのか。

失敗学のすすめ (講談社文庫)

失敗学のすすめ (講談社文庫)

責任をとらせることは大事だが、吊るし上げただけでは何も改善されないのだよね。失敗した「犯人」を糾弾すれば簡単に解決したように錯覚できて、気持ちはおさまるだろうけれど、次へ何も残さない。「解決」は忘れることを早めることでもあるから。事実をすべて明らかにして、結果を精査して、対策を練ることだけが未来へ繋がる。難しいけれど、これからやらなきゃいけないことってそういうことなんだよな。苦しいしつらい。
死んでも何も残さない―中原昌也自伝

死んでも何も残さない―中原昌也自伝

生い立ちと映画や音楽、文章についてのインタビューを起こしたもの。読んでてスカっとした。こういうのでスカっとしてるのはひじょうに暗いと思うけれど。あぁこういう他人の言葉で代償行為をしていてはいけない。自分の言葉で語らなければいけない。と思いつつ引用。

でも、最近の娯楽は無神経な自己肯定ばかり。全部吐き気がする。書けないのも、自己肯定を否定したいだけだからだ。(中略)書きたくて書いているんじゃないことしか書きたくないことが、どうして、わかってもらえないのか。(57頁)

わからないものはすべてないものにする状況は何なのか。だから、自分の知らないことはみんな悪口をいう、僻み根性の人間ばかりもてはやされる。(77頁)

なぜ、みんな共感し合わなければならないのか。共感など全部うそっぱちだということを、率先して理解しなくてはいけないのに、逆だ。本当に腹が立つ。人はみな、なぜ生きているのかわからないまま、一人で死んでいく。どう頑張っても人間は孤独だし、ほんとうは何でもない。しょせん、それだけ。(138頁)

安易な共感はわたしがいちばん警戒している感情だ。そうでないと考える間もなく鵜呑みしてしまう。それくらい中身がない。だからこんな引用して共感してる場合じゃない。