読了

平成大家族 (集英社文庫)

平成大家族 (集英社文庫)

おばあちゃん、夫婦、30歳のひきこもり息子でそれなりに穏やかに暮らしていたところへ上の娘2人がそれぞれの「家族」を連れて転がり込んできたことにより大家族になるコメディー。語り手を替えて物語が進んでいく。みんなちょっととぼけたところがあって、読んでると楽しくなる。「ひきこもり」が登場人物にいれば話も深刻に暗くなりそうだけど、突き抜けた明るい登場人物によって人生大転換させられたりして!男性陣がちょっと頼りないようなところがあるのだけど、女性陣はそういうのをなじったりしないし、信頼して関係を築いているのが好きなところ。中島さん、何読んでも面白い。品があってクスっと笑える文章。

小川洋子対話集 (幻冬舎文庫)

小川洋子対話集 (幻冬舎文庫)

これも面白かった!小川さんの頭のなかを覗いてみたい!という読者の願いをちょっとだけ叶えてくれた。なぜあの小説を書こうと思ったのかとか、どんな目で世界を捉えているのか。実際にお話しする姿を見てみたいなあ。どんなテンポで言葉を発していくのかな。対談相手の岸本佐知子さん、前から著作を読んでて「この2人なんか似てない?」と思っていたけど、やはり小川さんは岸本さんの『気になる部分』を読んで「そう!そう!」と膝を打つこと多し、だったらしい。

溶ける街 透ける路

溶ける街 透ける路

初・多和田さん。ドイツ、フランス、スイス、スペイン、北米などの訪れた街についてのエッセイ。どれもブックフェアとか文学祭、講演会などで呼ばれた街なので、こんなにたくさんの国で本にまつわるイベントが開催されているんだ!と感激。とくにアメリカのシアトルは本屋と喫茶店が多いのだって。いいなぁ。公共図書館にはアジア分館があって、日中韓ベトナムなどの国の作品がたくさん収蔵されているそう。ワシントン大学シアトル校には日本の新刊小説が充実してるとか。
一番印象に残ったのは、スペインのレストランで食事をしているときに入り口付近で男女が延々と口喧嘩をしていたエピソード。女性は相手を非難する語彙が豊富で、男性は相手の言葉は受け入れるけど自分の正当性も譲らないという調子で、口論はどんどんエスカレートし、客はみーんなその喧嘩をじっと聞き入ってる。語彙が少なければ感情だけ先に頂点に達してナイフでひと突き!なんてことになりかねないような激しいやりとりだったそうなのだけど、その男女は2時間も3時間もずっと喧嘩してたんだって。おもしろいなー。そういうのってお国柄なのか、個人差なのか。
多和田さん作品、これからどんどん読もう。