10年目

昼間、出張へゆく夫を最寄り駅まで見送った。とはいえ明日帰ってくる。ひとりで過ごすのは好きなほうだが、ひとりの夜に消灯する瞬間が嫌いだ。いまの季節だと、その前段階の冷えた布団に入る瞬間も嫌いだ。天然の湯たんぽ(夫)がないと寝つきも悪くなる。
湯たんぽと一緒に暮らし始めて9年が経った(1/7)。10年目突入である。結婚記念日は別にあるのだが、結婚式披露宴なし、写真を撮っただけの純然たる入籍日であるうえに、わたしが仕事に疲れて「もう扶養家族にしてください」と願い出て入籍したという、フェミニストに知れたら「こういうオンナがいるから!」と糾弾されそうな経緯なので、記念日的存在感がひじょうに薄い。その代わりこちらの「一緒に暮らし始めた日」が年初だというのもあり、なんとなく目安になっている、少なくともわたしの中では。
わたしたちは交際を決めたとほぼ同時に一緒に暮らすことを決め、たぶん3週間もしないうちに引越しをしたのだと思う。長年友人関係だったとかそういうのでもない。出会って5ヶ月後くらいのことだ。よって互いのことをほどんど知らずに暮らし始めた。コーヒー派か紅茶派か、朝はパンかご飯か食べないのか、目玉焼きには醤油なのかソースなのか塩コショウなのか知らなかった。暮らすうちにコーヒー派、朝は食べるよりもギリギリまで寝てたい派、ソース派だけど塩コショウでもかまわないことがわかった。それ以外にもひとつひとつ、知ることになった。いまでも「え?そうだったの?」ということに出くわすことがある。10年では出尽くさないのかと思うと、人と暮らすのはおもしろい。